「トランプ待ち」の米中関係 習氏、協力姿勢も警戒色濃く 硬軟織り交ぜメッセージ〔深層探訪〕
バイデン米大統領と中国の習近平国家主席は、最後となった首脳会談で両国関係の安定化に向け、対話を維持する重要性を再確認した。バイデン政権も残り2カ月となり、米中関係は既に「トランプ待ち」モード。習氏はトランプ次期米政権との協力を目指す姿勢を打ち出しつつも、その発言からは対中関税の大幅な引き上げなど「米国第一」を掲げるトランプ氏への警戒感が色濃くにじみ出た。 【写真】トランプ次期米大統領 ◇7項目の「教訓」 「過去4年間で米国との関係は浮き沈みを経験したが、バイデン氏とのかじ取りにより安定を実現した」「習氏とは常に意見が一致したわけではないが、会話は終始率直だった」 記者団の前で笑顔で握手を交わした米中首脳の1年ぶりの会談は、両首脳の交流を振り返るやりとりから始まった。ただ、会談中の習氏の発言は、旧交を温める雰囲気からは懸け離れていた。 「4年間の経験は総括する価値があり、教訓は記憶しておくべきだ」 習氏が列挙した7項目の「教訓」は、「中国封じ込め」への反対、相手国を「対等」に扱うこと、意思疎通の重要性、台湾問題をはじめとする中国の「核心的利益」を侵害しないことなど。米中経済の切り離しが両国にとって有害であることも強く主張した。 現職のバイデン氏を前に、トランプ氏の話題をあからさまに持ち出せば外交儀礼に反する。習氏としては、過去の総括と称して、対中国で強硬姿勢が見込まれるトランプ次期政権へのメッセージを込めた格好だ。 ◇在任中の訪中なし バイデン氏と習氏の交友の起点は10年以上前にさかのぼる。バイデン氏はオバマ政権の副大統領時代に中国四川省を訪れ、習氏の手厚いもてなしを受けた。当時を知る北京の識者は「習氏と個人的関係を築いていたバイデン氏の大統領就任当初、両国関係が上向くとの観測があった」と語る。 だが、ふたを開けてみると、バイデン政権はトランプ前政権が引き上げた対中関税を維持。中国を「唯一の競争相手」と位置付け、同盟国との連携強化で対中包囲網を形成した。中国は台湾海峡や東・南シナ海で威圧的行動を強め、ロシアや新興・途上国「グローバルサウス」を糾合。米欧主導の国際秩序に挑戦する動きを加速させた。 バイデン氏は計3回、習氏と対面で会談した。在任中に中国を訪れなかった米大統領は近年ではまれだ。 ◇対話の糸 サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は記者団に対し、両首脳が会談終盤にメモを読まずに互いの思いを語る場面があったものの、過去2回と同様に「意見が相違する部分で引かなかった」と説明。両国の対立の根深さをうかがわせた。 トランプ氏は新政権の閣僚級ポストに対中強硬派をそろえる構えで、来年1月以降、通商・安全保障面での米中の摩擦激化は必至だ。トランプ、習両氏が対応を誤れば、バイデン政権下でかろうじて維持してきた対話の糸も切れかねない。(リマ時事)