準天頂軌道衛星「みちびき」本格運用で、どんなサービスに応用される?
離島の「買い物難民」を救えるか
2016年11月、日立造船が熊本県や上天草市の協力を得て、同県の天草諸島で全長1.8メートルのマルチコプタータイプと同3.7メートルのヘリコプタータイプの2種類のドローンを使って物を運ぶ実証実験を実施しました。離島の「買い物難民」が問題になっており、これを解消する取り組みの一つです。 GPSと「みちびき」を組み合わせることで、高精度な制御ができるかどうかを確かめました。2機は、同市の大矢野島と対岸にある湯島間の約6.5キロメートルを自律飛行。片道約20分で、往路は書籍1kg、復路は乾燥わかめ1kgを積んで実験を終えました。 実験に立ち会った同市職員は「ドローンは、着陸するスペースにほぼ誤差なく着陸しているようでした。島への輸送手段は現状、船便だけです。実用化されれば災害時に港湾施設が被災しても、医薬品などの必要な物資を送れるのでメリットはあると思います」と期待します。
自動車の自動運転に応用
交通分野では、自動車の自動運転を支援するサービスが検討されています。三菱電機は9月から、「みちびき」を使ったセンチメートルの精度で測位をするサービスの試験提供を始め、これに合わせて自動運転の実証実験を開始しました。 「みちびき」計画を推進する内閣府準天頂衛星システム戦略室によると、自動車の自動運転には数センチメートルの精度が求められますが、GPSだけだと、メートルの誤差が出てしまうといいます。 同社広報部によると、自動運転には、車載センサーやカメラを使って周辺環境を読み取る「自律型走行」と、衛星からの情報と高精度の3次元地図と組み合わせて位置を把握する「インフラ型走行」の2種類があります。今回は「インフラ型走行」の実用可能性の確認が目的です。 「自律型走行」だけの場合、大雪や濃霧などの悪天候時には、車載の機器だけでは道路の状況が読み取りにくいという課題があります。「インフラ型走行」を使えば、天候の影響を受けずに現在位置の把握が可能です。 同社では今後、「自律型走行」とともに「インフラ型走行」の研究開発も進め、「安全かつ高精度に制御できる自動運転の実用化を目指したい」としています。 (取材・文:具志堅浩二)