藤沢和雄元調教師が語る“秋古馬3冠制覇”の難しさ 04年達成のゼンノロブロイを管理
ドウデュースが有馬記念のレース前にターフを去った。20日の朝に歩様の乱れが見られ、右前肢ハ行と診断されての出走取消。管理する友道師は「これだけの馬。オーナーと相談して出走を見合わせるということになりました」と説明した。競馬ファンだけではなく、日本中が注目するレースで、出走していたら圧倒的な1番人気に支持されただろう。それだけに、指揮官は「ファンの皆さんに申し訳ないです」と素直な気持ちを伝える。これは苦渋の決断であり、馬のためを思った決断だったに違いない。種牡馬としてのドウデュースの活躍を期待したい。 ドウデュースには00年テイエムオペラオー、04年ゼンノロブロイに続く史上3頭目となる天皇賞・秋、ジャパンC、有馬記念の同一年によるV、いわゆる“秋の古馬3冠制覇”が懸かっていた。しかも有馬記念が引退レース。調整の難しさはわれわれの想像以上のものがあったはずだ。 今回の挑戦について、ある人物に話をうかがっていた。ゼンノロブロイを管理した藤沢和雄元調教師(73)だ。数々の名馬を育てた名伯楽も調整には苦労した。「これだけの期間で3つのレースを使うのは大変なこと。ましてや3つともG1だからね。秋3戦の全てをピークの状態にするのが理想だけど、3戦をしっかり走れる状態にするだけでも難しいことですよ」と当時を振り返る。 藤沢和元調教師は02、03年にシンボリクリスエスで挑み、ともに天皇賞・秋と有馬記念を制したものの、ジャパンCでは2年連続3着に敗れた。03年は2つのG1でレコードタイムを記録し、圧倒的な強さを誇りながらも達成できなかった。古馬の秋3冠制覇の難しさを最も知る人物である。「強いと言われる馬は今までにたくさんいて、私も管理させてもらったけど、強くても負けることはある。3つを勝つことは大変だけど、結果として勝たなければ強くはないですからね」とうなずく。シンボリクリスエスが弱かったわけでない。単純にレースでの強さだけでは達成できない難しさがある。 こうなると、秋の3冠を使う理由はあるのかということになる。褒賞金があるとはいえ、今はレースを使い分ける時代であり、昔と違って海外遠征の選択肢もある。記者もこの仕事を長くやっており、一連の流れは分かっているつもり。固執する必要はないのかもしれない。 ただ、記者は昭和の競馬ファンでもある。日本で強い馬同士の戦いを見たいし、有馬記念という年末の大舞台で頂上決戦を見たいという気持ちはある。同じ気持ちのファンは多いはず。それがファン投票歴代最多得票数の47万8415票に表れているように思う。最後の舞台に立つことはできなかったが、果敢に3冠制覇を目指したドウデュースには最大限の賛辞を贈りたい。(デイリースポーツ・小林正明)