震災知らない世代も取材に奮闘 ── 尼崎のラジオ局・特番への意気込み。阪神淡路大震災から20年
FMあまがさきが阪神淡路大震災特別番組「20」仲野博文さんら THE PAGE大阪
この「20年」が阪神淡路大震災を「しっかり」伝える最後のチャンスかもしれない──。兵庫県尼崎市にあるコミュニティラジオ局「エフエムあまがさき(愛称・FMaiai)」が17日午後2時から、阪神淡路大震災20年の特別番組「20(トゥエンティ)」を放送する。同局編成部長で国際ジャーナリストの仲野博文さんらが1995年の阪神淡路、そして2011年の東日本両大震災時のメディアが、手探りで報道を始めていることに着目。多くの阪神や東北のメディア・行政関係者に話しを聞きに行き、それをまとめたものを流し、これまでの課題を検証するとともに「未来の震災報道モデルがどういったものになるかを考えていきたい」と意気込みを見せる。
阪神淡路を「しっかり」伝える最後のチャンス
仲野さんは昨年、地元にある同局の編成部長に就任。今年が阪神淡路大震災発生から「20年」ということで「このことをしっかり伝えられる最後のチャンス」と考え同番組を企画した。 自らのネットワークを使い、阪神淡路を伝えた「神戸新聞」「サンテレビ」「ラジオ関西」。そして、東日本を伝えた「TBSラジオ」や「石巻日日新聞」といったメディアで、現場取材や指揮を担当した人たちに話しを聞いた。また、行政関係者などにも話しを聞き、その数は合わせて18人にのぼるという。 「コミュニティラジオ局は、阪神淡路大震災以降、自治体が『緊急時に放送できるように』と立ち上げたケースが多いんです」と仲野さん。だが、それから月日が流れ、予算的などの関係で維持が出来ず、全国では閉局するケースも相次いでいるという。 阪神淡路の時と違い、現在はSNSなどで市民が気軽に情報を発信できる時代。そんな中、災害時にメディアや自治体は市民とどのように協力して発信していけるかなどを検証しながら、未来の震災報道モデルを考える。そうした点から、ネットメディアやSNS関係者にも話を聞いている。
震災知らない世代、取材を通して知る被災の実態
今回の取材で仲野さんは、FMaiaiの21歳ディレクター、小田正隆さんを同行取材に指名した。小田さんは震災を知らない世代。だが、そういう人だからこそ、この阪神淡路に触れてほしい。そして、こうした経験が、いつ起きるかわからない震災に役立つと考えたからだ。 小田さんは、普段は音楽番組を担当。街ネタなどは取材したことはあったが、メディアのプロの話しをここまで聴き編集したのは初めての経験だった。「この前、尼崎の成人式で同年代の人に阪神淡路のことを聞いたけど、だれも知ってるとは答えなかった。僕自身も知らなかったんで」 だが、取材を進めていくうちに、神戸中心部など「自分が知っている場所」が大変なことになってたこと、そしてメディア関係者の取材をして感覚が変わった。「あんなにひどい状況になっていたのは、資料を見るたびにショックだった」。しかし、同時にこうしたことを伝え、自分自身も震災が発生したら何をしなければならないかを学びながらの取材・編集作業となった。 仲野さんは「例えば小田君に1から『阪神淡路を知れ』なんて言いません。ただ、なにかをつかんでくれたと思うんです」。20年という月日がたち、阪神淡路を指揮した関係者も、たいていは定年を迎えるなどしている。この「最後のチャンス」に思いを込めて伝える。