ウルフルズ約2年ぶりホールツアー ファイナル公演オフィシャルレポート「永遠にこんなツアーが続くようにこれからもがんばります」
魂揺さぶる男トータス松本のMCも絶好調で、後2年で還暦という話題から、「おじちゃん」「おじさん」「おっちゃん」はたまたジョンB提案の「おじちゃま」など呼び名についての話題や、山形県酒田市が御当地という事もあり、NHK朝の連続テレビ小説『おしん』についても語られる。一昨日、福島を訪れた事から先日亡くなられた西田敏行についても触れられ、故人の名曲「もしもピアノが弾けたなら」と『おしん』の音楽が同じく作曲家の坂田晃一が手掛けている事など、おしゃべりが一向に止まらない。もちろん全国各地で御当地の話がされているわけで、そう考えると同じ楽曲構成流れでも、ツアー1本1本すべてに違う味わいがある。 ジョンBが歌う「ニャーホホ」、サンコンが歌う「コミコミ」とトータス以外のふたりが歌う事で違う感触があるし、だからこそ、その後にトータスが歌う「ど真ん中」での山形(ヤマガタ)からの「ガッタ! ガッタ!」と熱を帯びていくファンク節がとんでもなく痺れる…。この3曲の流れはウルフルズというバンドの真骨頂が感じられた。そして、ウルフルズの心意気が充分に届けられる「いい女」では、最後にトータスが袖にはけて、「トータス松本に逢いたいか!?」というお家芸のコール&レスポンスから着替えが完了したトータスが再び我々のもとへと現れる。 個人的に京都でのライブで衝撃を受けたのは、この着替えのシーンであった。ウルフルズのツアーTシャツ・青に白ラインのジャージズボンという上下に、赤と白の長襦袢を羽織り、淡いブルーのハットを被る。いわゆる特注のド派手豪華な衣装というよりは、曲目や美術電飾セットなどと同じく想像以上にシンプルストレート。真っ直ぐド直球で必要最低限というか、余分なもの無駄なものがまったくない。先程までは結われていた長髪もおろされ、1992年デビュー・シングル「やぶれかぶれ」のMVを彷彿とさせる。歌われるのも、「今夜どう?(ここまではOK!)」とスーパーブレイク夜明け前の1995年リリース楽曲であり、当時のなりふり構わない荒々しいラフさが結成36年の現在にも漲っている。 このツアーではメンバーを丁寧に丁寧に何度も何度も紹介する場面も印象的であったが、ここでもトータスは真心ブラザーズの大名曲「どか~ん」を歌って、桜井を紹介していく。桜井もギターをバットの様に持ち構えたり、ギターフレーズを弾いたりとフルスイングで応えていく。こちらも1990年の楽曲ながら全く色褪せることなく、2024年の現在に更新されて、我々の耳に飛び込んでくる。「オレたちはウルフルズ! 君たちはお客!」というコール&レスポンスもそうだが、昔から変わらないと想っているものが、実は現代で変化進化を遂げている凄み……。酸いも甘いも全てひっくるめて爆旅を積み重ねてきたウルフルズならではのパワーである。 「(今までは)東京に戻ったり、地元大阪でファイナルをすることが多かったけど、今回は山形の酒田で終わるのが続いていく感じがするのよね!」 トータスは、こう言った。オープニングにおける日本地図の演出もそうだが、楽器や機材を乗せて全国津々浦々を走り回るツアートラックにも、トータスオリジナルイラストのウルフルズマスコットキャラわいもくんたちが日本地図の上を旅するイラストが描かれている。という事は、2002年は35本のツアーだった『ツーツーウラウラ』だが、今回はシーズン1と名乗っている事もあり、もしかして、シーズン2以降も続いていき、全47都道府県を全国津々浦々してくれるのではと……勝手に妄想してしまう。 そんな抑えきれぬ期待が爆発しそうな中、歌力が強烈な「サムライソウル」が真っ赤な照明と共に突き刺さってきたりと、尋常じゃなく高揚するが、気が付くとまたもや『おしん』の話に戻っており、橋田壽賀子=アレサ・フランクリン説など大脱線するのも御愛嬌。ファイナルならではの楽しい解放感を歌からも雑談からも感じられる貴重な夜であった。 終盤は、地方で聴くからなのか昭和旅芸人の唄みたいな味わいもあった「ヤッサ!コレカラ音頭」を皮切りに、「バカサバイバー」「ガッツだぜ!!」とファンキーナンバーが二連発。 「ずっと永遠にこんなツアーが続くように、これからもがんばります! 一緒に歌ってけろ!」 おしん風味もある決意表明からラストナンバー「笑えれば」は、会場全員が大熱唱。みんなでツアーファイナルを祝うお祭りな雰囲気がとても心地良かった。 アンコール。「愛がなくちゃ」が歌われて、このツアー初の試みであるインスタライブを次の楽曲だけ実施されることに。その前にトータスは総評の様に、今回のツアーは若い人と男の人が増えた事を明かし、その上で「ワーワー! キャーキャー!」と声援を送り続けてくれる女性皆様にも感謝を述べる。 「ありがたいことにウルフルズは原曲キーを下げずにやれている! みんなもキーを下げずに〈ワーワー! キャーキャー!〉言い続けてください!!」 そこからの「バンザイ~好きでよかった~」に感激しないわけがない……。恋人へのラブソングというよりは、ウルフルズから観客みんなへのラブソングに聴こえたのは、私だけだろうか。 ファイナルならではの特別なダブルアンコール。トータスが長髪を揺らしながらハンドマイクで舞台上手下手両方にある花道へと向かい、観客にギリギリまで近づいて魂の歌を叫ぶ。その歌が「ええねん」というのも、これ以上の選曲があるだろうかという極上さ! 大団円というのは、こういう状況を言うのであろう。こうしてシーズン1の幕は閉じたが、全国にウルフルズを待ってくれている人がいる限り、ライブツアー『ツーツーウラウラツー』はシーズン2以降も絶対に幕を開いてくれるだろう。 ※註:会場のロビーに貼り出されているQRコードをスマホで読み込むと、ウルフルズのキャラクターである「わいもくん」が各地の名産物や観光名所とコラボしたスタンプがダウンロードできた。「各地のスタンプ」というのはこのスタンプを地図上に配置したもの。またファンクラブ会員はスタンプの数によってプレゼントが貰えた。スタンプは次回の『ツーツーウラウラツー』ツアーでも利用可とか?! Text:鈴木淳史 <公演情報> 『ウルフルズ ライブツアー2024 ツーツーウラウラツー シーズン1』 10月20日(日) 山形・希望ホール(酒田市民会館)