スペースX、史上初「民間人船外活動」を完了 米富豪ら2人が10分間ずつ宇宙遊泳
イーロン・マスク率いる米宇宙企業スペースXは12日、宇宙船クルードラゴンに搭乗する米実業家で富豪のジャレッド・アイザックマン(41)ら民間宇宙飛行士2人による史上初の商用船外活動を完了した。同社は宇宙旅行の商業化をめざしており、国家機関に属さない民間人のみで行う宇宙飛行計画「ポラリス計画(Polaris Program)」は画期的な一歩を歴史に刻んだ。 【画像】史上初の商用船外活動を行なった米実業家のジャレッド・アイザックマン アイザックマンは、米東部夏時間午前7時(日本時間同午後8時)前にクルードラゴンのハッチから宇宙空間に出た。続いて、スペースXの技術者であるサラ・ギリスが交代で船外へ。2人はオーストラリア、ニュージーランド、太平洋の上空を飛行するクルードラゴンの船外でそれぞれ約10分間の宇宙遊泳を行った。船外活動は午前8時ごろに完了した。 ポラリス計画の初ミッション「ポラリス・ドーン(Polaris Dawn、ポラリスの夜明け)」では、アイザックマンとギリス、今回は宇宙船内に残ったスコット・ポティートとアナ・メノンの4人がクルードラゴンに乗り込み、10日に米フロリダ州のケネディ宇宙センターからスペースXのファルコン9ロケットで打ち上げられた。 米航空宇宙局(NASA)のビル・ネルソン長官は、スペースXの船外活動成功について「商業宇宙産業にとって大きな飛躍だ」と称賛。NASAがめざす「活気ある宇宙経済を米国に構築する」という目標の実現に向けて前進したとの見方を示した。 これに先立ち「ポラリス・ドーン」ミッションでは高度1400kmに到達し、1970年代に月面着陸を果たしたNASAの「アポロ計画」以来、最も地球から遠い有人宇宙飛行を実現している。 スペースXによると、「ポラリス・ドーン」ミッションの宇宙飛行士らは約106分ごとに日の出を迎えるという。 「ポラリス・ドーン」は、宇宙旅行の商業化というスペースXの目標の一環として、同社の宇宙船と宇宙服の性能試験を行う5日間のミッション。同社の衛星通信サービス「スターリンク」のネットワークの試験も行い、放射線帯の通過による人体への影響など、クルードラゴンでの実験データを送信する。 ミッションの資金はアイザックマンが提供している。アイザックマンがSpace.comに語ったところによると、SpaceXはポラリス計画でさらに2つのミッションを予定しており、これにはハッブル宇宙望遠鏡の軌道高度を上昇させるミッションが含まれる可能性がある。 アイザックマンは、3回にわたるポラリス計画のミッションが、月と火星に人類を送り込むというスペースXの計画に貢献するだろうと述べている。イーロン・マスクは人類の火星移住計画を実現すると公言している。 決済処理会社Shift4 Payments(シフト4ペイメンツ)の創業者・最高経営責任者(CEO)であるアイザックマンの純資産額は、フォーブスの推計によると19億ドル(約2700億円)だ。同社は米国内のレストランやホテルにおける支払いの約3分の1を処理しており、アイザックマンは同社の株式の約38%を保有している。アイザックマンはスペースXが2021年に行った民間人のみの地球軌道周回飛行ミッション「インスピレーション4(Inspiration4)」にも参加していた。
Ty Roush