【高校サッカー選手権】川越南イレブンの選手権にかける想いが詰まった「今年のベストゲーム」
10月13日、第103回全国高校サッカー選手権埼玉予選はいよいよ決勝トーナメントが始まった。ここまで2試合を勝ち抜いてきた川越南は大宮南と対戦し、スコアレスのまま突入した延長戦で惜しくも敗れた。 【フォトギャラリー】決勝トーナメント1回戦試合風景 西部支部3WAリーグ所属の川越南にとって、S2(埼玉2部)Aリーグ所属の大宮南はカテゴリーで言えば格上。その相手に対し、「80分間は本当に狙い通りのサッカーができて、チャンスも何回かあったし、(対戦相手が)大宮南に決まってからこの一か月くらい想定してトレーニングをやってきた成果が出た80分だった。本当に選手たちがよく取り組んでくれた。これだけのゲームができて"よくやったな"と思います」と試合後に久津間岳文監督が振り返った通り、守備的に戦う中でも積極的にボールにチャレンジする姿勢や、隙あらばゴールを狙う姿勢もみられ、十分に相手を苦しめた。 川越南は今年、リーグ戦を全勝で終え昇格を決めたが、そこで満足することなく常にこの舞台を見据え準備を進めてきた。普段の4-4-2とは別に、大学生や強豪チームのセカンドチームなど、格上との練習試合で5バックの練習も同時に行ってきた。そして2試合を勝ち抜き"県大会"と呼ばれるこの舞台にたどり着き、一年間準備してきたシステムを試す時が来たのだ。 それでも実戦は練習とは相手の本気度も緊張感も違うもの。そう思い通りにはいかないのが世の常だ。しかし、川越南イレブンはワンプレーごとに手応えと自信を積み上げ、ついには相手を80分完封することに成功した。 「負けてしまいましたけど、今年のベストゲーム」。 結果的に延長戦で敗れてしまったが、指揮官はこの試合を今年のベストゲームだと断言。キャプテンのGK1郷原恵太(3年)も「相手が格上ということでそれに対応するための練習をここまでやってきて、通用しない部分の方が多かったけど、通用して戦えた部分もあったので、やってきて良かった。最後相手にしっかりぶつかっていい試合ができたと思うので悔いはないです」とコメント。これは出せるものを全て出し切り、やり切った者にしか言えない言葉だ。 それでも3年間を振り返れば「受験勉強とかいろんな状況もある中、ここまで続けるだけでも精一杯なところもあった。自分たちの悔いとしては、ケガや塾とかで全員が揃わないことが多かったこと」と悔いも残ると話した主将。「リーグ戦で昇格したので、今年より難しいゲームが多いと思うし、そんなに甘くないと思うんですが、そこを頑張って上を目指してほしい。インターハイや選手権では結果も大事ですけど、とにかく最後まで続けてやり切ってほしい」と後輩たちにもやり切ってほしいと後を託した。 そんな3年生に対し指揮官は「私が去年から来たので3年生は2年間しか見れませんでしたけど、みんながサッカーに対して本当に真摯に取り組んでくれて、一生懸命やってくれた。こっちがこうしたい、こういうチームにしようということに本当によく向き合ってくれた。それが決勝トーナメントにこれたり、こういう試合ができたことに繋がったと思います。負けたけどあの子たちのおかげでいいゲームができた」と感謝の言葉を並べた。 そして次の世代の選手たちには「3年生が県大会に連れてきてくれて、この雰囲気やここまでできるという姿を見せてくれたので、次の世代の子たちもこの舞台に立ちたい、もっと言えばここで満足するんじゃなくて、ここで勝ちたいと欲を持ってやってもらいたい」と期待した。 高校最後の試合で"ベストゲーム"をやってのけた選手たち。そこに至るまでの苦労と努力があればこその結果だ。負けてはしまったが、川越南イレブンの勇姿は後輩たちの記憶にも残ったことだろう。 (文・写真=会田健司)