オンラインIT人材育成事業を通して、女性がもっと稼げる社会を。【Ms. Engineer代表取締役 やまざきひとみ】
ミズエンジニアが力を入れるのは、女性のアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を解くこと。 「日本の女性は本当に自信がない。自らのバイアスによって思考や行動に制限をかけてしまう。ミズエンジニアのブートキャンプは、同じ目的を持つ女性が集まり学ぶため心理的安全性があり、バイアスのない環境での学習が可能です。スキル面とマインド面の両方が育つことを重視しています」 派遣で医療事務に従事していたある女性は、ブートキャンプに参加したことでキャリアシフトを果たし、現在はミズエンジニアで働いている。派遣として勤務していた当時は年収も低く、先々の展望が見えなかったという。 「女性を低賃金に固定化し、目標を持つ権利を奪うような社会は本当に問題だと思います」
やまざきがジェンダー格差の解消にこだわるのは、小学校から大学までエスカレーター式の女子校で、ジェンダーバイアスのない環境で育ったから。 「長くキャリアを生かせる仕事がしたいと思っていたのに、いざ社会に出る時のジェンダー格差に違和感があったんですよね」 実力で評価してくれる企業で働きたいと、サイバーエージェントに入社。アメーバのメタバースサービス、アメーバピグのプロデューサーとして技術者と一緒にゼロからサービスを立ち上げ、何百万人ものユーザーを獲得するという成功体験を得ることができた。たくさんのチャンスを与えてくれる環境にいられたことは非常にラッキーだったと振り返る。 こうして20代をがむしゃらに働いてきたが、30歳を迎える頃、身体を壊してしまう。女性が何年も走り続けることの体力的な難しさを痛感し、15年にやむなく退社。人生で初めての挫折だった。引きこもるように家で過ごす間、読書に没頭し、映画に夢中になるうちに気力が戻った。この体験がやがてミズエンジニアに繋がっていく。 「いま考えるとリスキリングだったんです。経済の仕組みとか哲学とか何も知らなかったことに気付いたんですよね。新しいことを体系的に学び直すのは楽しかったし、私が抱えている苦しさは私のせいだけではなく、社会構造的な矛盾があるからだということに気付き、モヤが晴れました」 いつかリスキリング事業をしたいと周囲の人と話をするうちに、女性のエンジニアを育てることに行き着いた。エンジニアはテレワークが可能なため、地方に住む女性たちにもチャンスが広がり、女性の経済的自立とIT人材不足の双方を解決できる。 「これはもう絶対立ち上げなければダメじゃん、っていう事業領域を見つけてしまったわけです。みんなが稼げるようになってみんなが幸せになることが本質的な施策だと考えています」