異例ずくめ 混戦続く 選挙区激変、見通し不明 衆院選埼玉14区(草加市、八潮市、三郷市)
自民が候補者擁立を見送り、公明の代表が出馬した埼玉14区。区割り変更で県東部を南北に細長かった選挙区は4市2町が外れ、残った有権者約11万6千人の三郷市と約7万6千人の八潮市に、新たに約21万人の草加市が加わった。構成が大きく変わった選挙区で自民不在の選挙。先の読めない混戦が続いている。 政治の信頼回復なるか 衆院選公示 埼玉16小選挙区に66人立候補 女性候補は倍増の17人
■3分の2を充てる 「党として本気度を示すため私が挑む」―。公明前職の石井啓一(66)は9月の会見で決意を述べた。1993年の初当選以来、当選10回の実績を誇るが、小選挙区で立候補するのは初めて。党の威信を懸けて比例重複せず、背水の陣で臨むが、石井は「本当に自分の名前を書いてもらえるのか不安」とも口にした。 それでも自公の結束は固い。衆院解散直後の13日、自民総裁の石破茂がいち早く草加市内を訪れ、「自公連立政権がこの日本を再び強くする」と石井の手を取った。公示後も応援議員や地元の自民県議や市議がマイクを握り石井を支える。 ただ、独自候補を擁立できなかった地元の自民支持層には混乱も起き、一部の自民支持者は他候補のポスターを張っている。関係者は「ポスターを見れば、簡単にはいかないことが分かるよ」とぼやく。 公明は衆院解散の9日、裏金問題で自民の公認を得られなかった三ツ林裕巳の推薦を決めた。三ツ林は区割り変更で13区に回るが、地盤の一部は14区に残る。推薦は自民支持層の離脱を最小限に抑えたい意図を指摘する声がある。
報道各社の情勢調査は多くが接戦と判断。党代表として全国を回らなければならない石井だが、公示から23日までのうち、3分の2の日数を選挙区内に充てた。「厳しい情勢だが何とか勝たせてほしい」。頭を下げる日々を送る。 ■地道さを強調 草加が新たに加わったものの、国民前職の鈴木義弘(61)は候補者6人の中で14区との付き合いが最も長い。地元の三郷と隣接する八潮での知名度は高い。「空中戦では駄目。直接対面で会わないと」と小まめに地域を回る。 そもそも鈴木は自民との縁が強い。参院議長や知事を務めた故土屋義彦の秘書から始まり、県議を4期務め、自民県連の青年部長などを歴任した。自らを保守系改革派と称し、候補者を立てられず不満のくすぶる自民支持層との距離を縮める。 自身も会社を経営し中小企業支援や経済政策にこだわる。政府の物価高や少子化対策を批判、「油にまみれる80代の社長がいる。利益が増えない中小零細企業がどう従業員の給料を上げればいいのか」と現場の声を届ける姿勢を打ち出す。裏金問題や石井の話題にはあまり触れず、地元で地道さを強調する戦略だ。