最新「殺人ミステリー」で主演...あの「政治好き」俳優が米大統領選とAI規制について「いま言いたいこと」
自然にすっと役に入れた
自らも闇を抱える探偵という役になり切るのは難しくなかった。「正直言って、全体としては簡単なほうだった。難しい役もある一方で、なぜか自然に演じられるような役もある。今回は後者のほうだった」と、彼は言う。「この役は、台本からすっとイメージが浮かんだ」 クレタ島での撮影では、現地の言葉を学ぶという興味深い体験もできた。「ほんの少しだけれど、ギリシャ語の勉強もしたんだ。実際にギリシャにいたから、それほど大変なことではなかった」と、ゴードン・レビットは言う。 「衣装係でも照明スタッフでも誰でもいいから、隣にいる人のほうを向いて聞けばいい。『もう1回言ってもらえる? 自分の言い方が正しいか確認したいんだ』ってね」 「もちろん、そのほとんどはもう思い出せない。僕は短時間であればすごく物覚えがいいという、俳優としては役に立つけれど、それ以外の生活ではおよそ役に立たない特技の持ち主なんだ。撮影中は覚えていられるのに、終わるとどこかに消えてしまう」 作中に繰り返し出てくるのが、ギリシャ神話のイカロス(ろうで作った翼で空を飛んだが、太陽に近づきすぎて命を落とす少年)の話だ。ギリシャの神々を引き合いに支配階級を批判するせりふもある。 また本作の「自由」というテーマは、米大統領選挙に向けた民主党の政策綱領と相通じるものがある(歌手のビヨンセは民主党大統領候補のカマラ・ハリス副大統領に、自分の持ち歌「フリーダム」を選挙運動で使うことを認めた)。 つまり、この映画にはアメリカの政治状況が密接に反映されているわけだ。
「できるだけ」政治的に
ゴードン・レビットは「政治好き」で有名だ。米紙ニューヨーク・タイムズは9月、ハリスと共和党大統領候補のドナルド・トランプ前大統領の初の討論会の後、その内容をまとめた動画を発表。 ニュースを歌にした社会風刺動画「ソンギファイ・ザ・ニュース」で知られる音楽グループ、グレゴリー・ブラザーズが制作を担当し、ゴードン・レビットが司会役として出演した。歌と社会的メッセージが盛りだくさんの作品だ。 「グレゴリー・ブラザーズとは昔から仲がいい。これまでも討論会動画を一緒にやってきた......彼らは最高だ」と、ゴードン・レビットは話す。「あの討論会は歌にするのが本当に簡単だった。ソンギファイ(歌化)できる場面がいくつもあったから」 もちろん、オハイオ州の都市で、ハイチ人移民が地元住民のペットを盗んで食べている、というトランプの虚偽発言もその1つだ。「大統領候補が『彼らは犬を食べている。猫を食べている』と言い出したら、歌詞にせずにはいられない」 政治には「できるだけ」関与するようにしていると語るゴードン・レビットは、11月の大統領選への投票も呼びかけている。 「民主主義国家の市民であることを、本当にありがたく思う。この国では、自分たちで指導者を選ぶことができる。(投票所に)足を運んで、票を投じてほしい」 「世界各地には、指導者を選べない人々が数十億人単位で存在する。確かに、アメリカの民主主義は完璧には程遠い。政府は機能不全で、さまざまな面で混乱している。それでも、独裁国家と比較したら、政治に参加して投票ができるのは特権だ。その特権に感謝しているし、11月に投票することを楽しみにしている」 一方で、AI(人工知能)の台頭も気にかけている。 カリフォルニア州のAI規制法案「SB1047」をめぐっては、自身のインスタグラムアカウントに投稿した動画で、同州のギャビン・ニューサム知事に法案への賛同を求めた。「AIは素晴らしいものになる可能性があるが、ルールや規制が必要だ。どうかSB1047に署名を」。 動画のキャプションで、ゴードン・レビットはそう訴えた(ニューサムは9月29日、SB1047に拒否権を行使した)。