経済成長率、26年ぶりの低水準 中国経済にいま何が起こっているのか?
2000年以降、急激な経済成長を遂げた中国は経済大国の仲間入りを果たしました。世界的不況を招いたリーマン・ショック後には、いち早く景気が回復したかに見えましたが、このところ経済成長は下降の一途をたどっています。市場経済化を進めているようでも、計画経済は捨てきれていない、いまだ謎に包まれた中国の経済はどうなっていて、何が問題となっているのでしょうか? 日本経済研究センター主任研究員の室井秀太郎さんが解説します。
長年続けてきた「一人っ子政策」が残した爪痕
中国の2016年の実質国内総生産(GDP)は、前年比6.7%増加した。伸び率は6年連続で低下して、1989年の天安門事件で中国が西側の経済制裁を受け、経済成長が急低下した90年の3.9%以来、26年ぶりの低水準になった。
中国の経済成長率が低下傾向をたどっている背景には、労働力人口の減少がある。中国では16歳から59歳までを労働力人口としている。中国は79年にトウ小平氏の主導権で改革開放に踏み切ったが、同時に総人口の伸びを抑制する目的で一組の夫婦が産める子供を1人に制限する一人っ子政策を採用した。 改革開放の初期以降は労働力人口が増加する人口のボーナス期を迎え、外資導入と国有企業改革などによって中国は高度経済成長を続けた。 しかし、長年続けた一人っ子政策の結果、中国の人口構成は急速に少子高齢化に向かっている。それまで増え続けてきた労働力人口は12年に減少に転じた。12年345万人、13年244万人、14年371万人、15年487万人、16年349万人という幅で減少が続いている。総人口に占める労働力人口の比率は12年の69.2%から16年には65.6%と3年で3.6ポイント低下した。 労働力人口の減少で中国の潜在成長率は低下している。中国の人口問題の権威である中国社会科学院副院長の蔡ホウ氏によると、16年から実施している第13次5カ年計画期間中の潜在成長率は6.1%と、その前の5カ年計画の期間の7.2%に比べ1.1ポイント低下するという。 潜在成長率の低下によって経済成長が鈍化していることは、成長率と有効求人倍率の関係を見ると分かる。中国国家統計局は四半期ごとのGDP伸び率を発表しており、一方、人力資源・社会保障省は四半期ごとの有効求人倍率を発表している。リーマン・ショックが発生した08年に、世界景気の後退を受けて中国の輸出が落ち込み、経済成長は急減速した。09年第1四半期にはGDP伸び率は6.2%まで低下している。一方、有効求人倍率は1を割り込み、08年第4四半期には0.85まで下落した。