ホロライブがドジャースとコラボ BEAMSはVRChatに「どこでもない東京のどこか」をオープン
「どこでもない東京のどこか」を描く、BEAMSの『VRChat』ワールド
では、実際にメタバースの「現地」を知る企業の動向はどうか。先週、特に反響があったのは、セレクトショップ・BEAMSの公式VRChatワールド「Tokyo Mood by BEAMS」だ。 レンガ造りの高架下。密集した飲食店。整備された川沿いの通り。空き缶が投げ捨てられた川。道幅を狭めるように自転車が並ぶトンネル。そこに描かれたグラフィティ――どこか見覚えがあるものの、どこにもない、「東京の街のイメージ」が濃縮された空間が、このワールドには広がっている。 BEAMSのバーチャル店舗は、この雑多な「東京」の一角に建っている。しかし、入場地点からある程度歩かないとたどりつかない。まるで自分たちはこの街の主役ではないと言わんばかりのたたずまいには、「ユーザーに愛される、10年続く空間」というコンセプトが宿っている。 BEAMSはこれまで、「バーチャルマーケット」への出展を重ねつつ、ユーザーとの交流も積極的に重ねてきた、『VRChat』に注力する企業の代表格のひとつだ。アダストリアやANREALAGEなど、アパレル方面からの参入が続く『VRChat』にて、ついに同社の「拠点」とも言える場がついに立ち上がった形だ。 5月31日にワールドが公開されると、その日のうちに1万人が訪れ、アーティストを招いたこけら落とし公演も盛況を博すなど、幸先のよいスタートを切っている。なにより、ここは「いい感じの飲み屋街」でもある。今後、少なくないユーザーが日々の酒盛りに興じる場になっても、不思議ではないだろう。 そして、このワールド制作を手掛けたのが、 VR映画スタジオ「カデシュ・プロジェクト」であることもポイントだ。同団体は、作品・イベントを貫く独自の世界観と、全編を『VRChat』で撮影した映像作品がユーザーから支持を得る、人気のクリエイティブチームだ。 一企業が、こうした団体と手を組み、コンテンツを制作するという流れは、なにも本件に限らない。現地を歩むには、現地を知り尽くした人と手を組むのが、なにより肝要だ。
浅田カズラ