なぜ?巨人の積極補強を評論家が不安視 副作用が生じる可能性を指摘 「気持ちが少し気になる」 そのポジションとは
4年ぶりにリーグ優勝を飾った阿部巨人の積極補強が今オフは目立つ。中日を自由契約になった通算166セーブのライデル・マルティネス投手、2023年のWBCで世界一、東京五輪でも侍ジャパンの金メダル奪取に貢献したソフトバンクの甲斐拓也捕手、昨年3Aでトリプルスリーを達成し、パイレーツから自由契約になったトレイ・キャベッジ外野手を獲得。さらに日米通算200勝にあと3勝に迫り、2013年には前人未到の開幕24連勝で楽天をリーグ優勝&日本一に導き、今オフに自由契約となった田中将大投手の獲得に動くなど、阪神・大山悠輔内野手、ソフトバンク・石川柊太投手の獲得には至らなかったものの、文句なしにこのオフの主役を張っている。 プロ野球評論家の中田良弘氏は加入が確実視される田中将大について「手術明けということもあって、バリバリの頃に比べると下降線をたどっているように見えるかもしれないけど、今の巨人で芽を出しそびれている投手にいい影響を与えるんじゃないかな。楽天とメジャーであれだけの数字を残してきた選手。どんな調整法、練習法、考え方をしているのかに触れられるだけで価値がある。もちろん、田中自身が菅野の穴を埋めるような活躍してくれることが、チームにとって一番大きいとは思うんだけど」と結果だけでなく、田中の存在がチームを刺激する大きな要素になると指摘した。 大城卓、岸田らが顔を並べる捕手陣に甲斐が加わることについては、「これは投手陣に安心感を与えるいい補強になったんじゃなかなと思うよ」と語る。その理由については「甲斐は捕り方に愛情がある。投手目線で見ててね。フレーミングがうまいとか、そういう次元の話じゃない。投手が投げやすい環境、投手を呼び込むしぐさ、丁寧な捕り方。阪神の原口にも似たところがあるんだけど、投手が安心して投げられる捕手だと思う。投手がボール球を投げても、一緒に責任を負ってくれるというかね。WBCやオリンピックの大舞台も経験してるし、キャッチング、配球、捕球と一生懸命さがとても伝わってくる捕手だから、確実に巨人にとってはプラスになる」と解説した。 マルティネスの加入については「後ろに大勢と二枚看板が控えているというのは、相手球団からしたらめちゃくちゃ嫌なはず。七回までにリードしてないと勝てる確率が下がる。昔の阪神のJFKじゃないけど、そんな感じ」とした一方で、大勢のモチベーションを気にかける。 「大勢はケガが多いけど、ここまで抑えを張ってきたという気概があるはず。そこでいきなり抑えはマルティネスと言われたらね…。選手は与えられた場所で力を出すしかないんだけど、大勢の気持ちが少し気になるところだね。チームとしては強力なストッパーが2枚いるという安心感はあるにしてもね」と、強いハートが必要とされる抑え投手が併せ持つ繊細な心が乱れてしまう可能性が少なからずあるのではと危惧した。 昨年、優勝&日本一に輝いた阪神は中継ぎとして59試合に登板し、1勝4敗14セーブ31ホールド、防御率1・55と活躍したゲラ以外に目立った補強はせず、連覇を逃して2位に終わった。積極補強に動かなかったことが連覇を逃した最大の要因ではないが、巨人はCSでリーグ3位のDeNAに苦杯をなめ、日本シリーズ進出を逃すという屈辱を味わった。短期決戦とペナントレースを同じ天秤で量ることは適当とは思わないが、敗れた側にとっては悔しさしか残らない。積極補強は吉と出るのか、それとも…。いずれにしても、勝利を追求する巨人の強い執念を感じる。(デイリースポーツ・鈴木健一)