技能賞を6度受賞した妙義龍

【ベテラン記者コラム】その引き際に「運」をみた。 大相撲の9月の秋場所を最後に元関脇妙義龍（37）、元関脇碧山（38）が現役を引退。それぞれ年寄「振分」「岩友」を襲名した。振分親方は三役を13場所つとめるなど長く幕内上位で活躍。6度受賞した三賞はいずれも技能賞。正攻法の鋭い出足でうならせた。ブルガリア出身の岩友親方は181キロの巨体を生かし、突き押し一本を貫いた。 【写真】ブルガリア出身の元碧山「力士になれてよかった」 両親方は昭和61年度生まれ。ともに平成23年九州場所が新入幕で、幕内在位はそろって71場所だった。この年度は15人もの関取を輩出した「花のロクイチ組」といわれ、部屋を興した元横綱稀勢の里（現二所ノ関親方）や元大関豪栄道（現武隈親方）をはじめ元関脇勢（現春日山親方）、元関脇魁聖（現友綱親方）、元関脇栃煌山（現清見潟親方）、元幕内德勝龍（現千田川親方）らが名を連ね、現役関取は幕内宝富士だけとなった。 大相撲には過去にもこうした多くの関取が誕生した年代がある。元横綱北の湖、横綱2代目若乃花ら昭和28年生まれの力士を指す「花のニッパチ組」、昭和38年生まれの元横綱北勝海、大関小錦らを生んだ「花のサンパチ組」、昭和63年春場所で初土俵を踏んだ元横綱曙、貴乃花らは「花のロクサン組」と呼ばれた。 プロ野球や囲碁、将棋などの勝負師の集団にも〝当たり年〟は存在し、企業も例外ではない。東京商工リサーチによると、上場企業の社長の生まれ年にも偏った年次があるという。例えば、新日本製鉄社長、会長を務めた三村明夫氏ら昭和38年の同社入社は「花のサンパチ組」といわれたそうだ。アップル創業者スティーブ・ジョブズ氏とマイクロソフトを立ち上げたビル・ゲイツ氏はともに昭和30年生まれ。学生時代に世界をかえる革新的な製品「パソコン」の原点を築き、新たな情報化社会を招いた。 同じチームや職場などに限られた期間、一定の同じ環境に人が集まり、影響を与え合うことを「ピア効果」という。同い年が一大勢力となると仲間や同僚らがお互いの行動、生産性に影響を及ぼす。ピアは英語で「年齢や地位、能力などが同等の者」を意味し、能力や意識の高い仲間が切磋琢磨（せっさたくま）することで集団がレベルアップ。個々の成長に相乗作用をもたらすとされる。 スポーツ科学の実験がある。単独と複数人との競争で自転車を走行させたときのタイムを比較すると、圧倒的に複数人で競争したケースに好記録が生まれる。相手に負けたくないという強い思いが動機となって、独走にはない力を引き出す。