2023年の出来事を堤伸輔が振り返る──「大谷翔平」「WBC」「藤井聡太」「YOASOBI」ほか、ライブエンタメ“超・私的”10大ニュース
藤井聡太の将棋8大タイトル全冠制覇&全棋戦優勝/3位
ここにこのニュースを持ってくるのが“超・私的”の面目躍如だと思ってください。いやいやそもそも将棋ってライブエンタメなのという突っ込みにもお答えします。はい、棋戦の中には決勝トーナメントなどを大きなホールで公開対局として行うものもあり、藤井聡太という21歳の若き大天才の登場もあって、男女問わずファンが大勢会場に押し寄せています。紛れもなくライブエンタメなのです。 私が将棋界で最も歴史あるタイトル「名人戦」の対局を初めて間近で見たのは1984年。京都の嵐亭という由緒ある旅館においてだった。将棋盤を挟む名人・挑戦者と記録係、観戦記作家、そして、特別に盤側に坐ることを許された私の5人だけ。その極限の静寂の世界から、いまや多くの観客が固唾を呑んで見守るライブスポーツのひとつともなった将棋。さらにネット上では、ライブ中継や将棋ユーチューバーたちによるAI将棋ソフトを駆使した「同時評価値放送」まで行われ、ファンはいくつかのデバイスを眺めながら、藤井の「神の一手」や、必敗の局面からの信じられない逆転勝利を見届ける。 そして、10月11日、藤井はついに8つ目のタイトル「王座」を獲得し、史上初の「八冠制覇」を成し遂げたのだ。そこまでに、タイトル戦以外の一般棋戦と呼ばれるトーナメント式の4棋戦も制していたので、藤井は将棋界の全棋戦に勝ち、事実上の「十二冠」になったとも言えた。スポーツを始めあらゆる“勝負事”で、これほど圧倒的な強さの例をほかに知らない。
YOASOBIの韓国ライブチケットが1分で完売/4位
10月、「アイドル」などの大ヒット曲を連発してきたYOASOBIが、12月16日に初めて韓国・高麗大学体育館で単独ライブを行うと発表するや、チケットは発売後1分以内で売り切れた。翌17日の追加公演もすぐに決まった。 いまでは知らない人も多いかもしれないが、かつて韓国では、テレビで日本の音楽を流したり、日本映画を上映したり、日本のCDを売ったりすることが、さまざまな法律に基づき行政的に禁止されていた。当然、コンサート開催もあり得なかった。戦前の日本の植民地支配により、学校で日本語を学ぶことを強制されたり、日本式の氏名を名乗ることを強要されたりした歴史からすると、致し方のない流れだった。 私も1980年代の末に韓国取材に行き、実感したことがある。ソウルの日本人特派員の長老Kさんから、カラオケホールで“日本語で”歌うよう促されたのだ。「いいのかな?」と思いながら、せめて知っている韓国の曲をと、「釜山港へ帰れ」を日本語で歌った。ホールでワイワイお酒を呑んでいた韓国のサラリーマンたちが、一転、水を打ったような静けさに。さすがにモノが飛んできたりはしなかったが、その雰囲気は耐え難いものだった。Kさんは私を使って“人体実験”をやらかしたのだ。 20世紀末の金大中大統領の時代から少しずつ「日本文化の解禁」が進んだが、日本の歌手によるライブコンサートなどには「席数制限」がしばらく残った。 それがいまでは追加公演も打てるのである。YOASOBIのふたりは韓国語でMCをして、日本語で歌った。2日間で9000人を集めた単独ライブの大成功を喜びたい。
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