第93回選抜高校野球 トレーニングで恩返し 京都国際・青山打撃コーチ /京都
<センバツ2021> 23日にセンバツの初戦を迎える京都国際のトレーニングメニューは多彩だ。タイヤの上に立ったまま球を打って体幹を鍛えるものや、周囲約200メートルのグラウンドを40秒で一周して体力の向上を図るものまで、内容もさまざま。これらのメニューを組み立てるのは2020年春、チームの打撃コーチに就任した青山友紀さん(32)だ。【中島怜子】 ◇プロ入り挑戦も 経験生かしナイン指導 広島県出身。高校は当時住んでいた滋賀県の綾羽に進学し、強打者として名をはせた。2年生の夏に滋賀大会で放った4本塁打は、大会記録だ。大学野球の強豪・東北福祉大に進むと、元選手などの講演を聴いて回り、トレーニングに興味を持つようになった。 大学卒業後の1年間はプロ野球の入団テストを受けながら、球児たちを指導するPA(パフォーマンスアドバイザー)として関西各地の高校を回った。その後、社会人野球のチームでプレー。プロ入りは断念したが指導者は目指さず、引退する17年まで選手であることにこだわった。 京都国際はPA時代に回った高校の一つ。当時から小牧憲継監督(37)がチームを率いていた。「『指導しながら、グラウンドを使って一緒に練習してくれてもいいから』と監督は言ってくれた。そんな寛容なことを言ってもらえることはなかなか無く、ありがたかった」と振り返る。 それ以来、頭の片隅には京都国際のことがあった。再び現役に戻るつもりでトレーニングの勉強をしていた19年夏、再び小牧監督に連絡を取る機会があった。京都国際が夏の京都大会で準優勝に輝いたからだ。健闘をねぎらうと、返ってきたのは「いつになったら、うちに来んねん。お前の力が必要や」。かつて受けた恩が思い浮かび、現役へのこだわりはほどけていった。 20年春から、部員たちと寮で共同生活を送るようになった。自分を知ってもらい、彼らを知ろうと、空いた時間に一人一人と話すようにした。「『どこから来たのか』『何歳か』など部員から質問してもらった。知らない大人に呼び出され、怖かったかもしれないけれど」と笑う。 トレーニングメニューは、これまで学んだ知識や経験を生かし、野球ができる体作りが目的。「筋力や持久力など、まだまだ鍛える必要がある」。選手が力を発揮し、小牧監督が試合でより良い選択ができるようにするのが、コーチの仕事と考えているからだ。 試合を見る時は毎回、居ても立ってもいられない気持ちになる。それだけに、20年秋の府大会3位決定戦に勝ち、近畿大会出場を決めた時は、スタンドで誰よりも喜んだ。「10年前の私は、この学校に、そして小牧監督に助けられた。今度は私が助けになりたい」。聖地で恩を返すその時が、間もなく訪れる。 〔京都版〕