コロナショックで東京でも人口減少が起こったワケ
人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 【写真】じつは知らない、「低所得家庭の子ども」3人に1人が「体験ゼロ」の衝撃! 100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来のドリル』は、コロナ禍が加速させた日本の少子化の実態をありありと描き出している。この国の「社会の老化」はこんなにも進んでいた……。 ※本記事は『未来のドリル』から抜粋・編集したものです。また、本書は2021年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。
東京都の人口は1400万人を突破してすぐ割った
コロナ禍では東京都の人口減少も起こった。 東京都統計部によれば、2020年12月の動きを捉えた「2021年1月1日現在人口」は前月より2489人減って1396万236人となった。2020年を通年で見ると、5ヵ月連続で前月を下回ったことになる。2021年2月には、24年8ヵ月ぶりに前年を下回った。 「2021年4月1日現在人口」は前月より1万5155人増の1395万7179人となり、8ヵ月ぶりに人口減少に歯止めがかかった。新年度がスタートし、入学や就職で上京する人が多かったということだ。ただ、2020年4月は前月比で3万831人増えていたのに比べると、増え幅は半分ほどだ。依然として本格的な回復とはいえない。 東京都の人口は、1回目の政府の緊急事態宣言下にあった2020年4月を捉えた「5月1日現在人口」が1400万2973人を記録し、初めて1400万人を突破した。 ところが5月に入ると減り始め、翌月の「6月1日現在人口」は3405人少ない1399万9568人となった。突破した翌月にはもう1400万人を割ったのである。以後は概ね下落傾向をたどり、12月までのトータルでの人口減少幅は4万4579人である。 しかしながら、2020年を年間集計してみると、むしろ前年より8600人増えており25年連続での人口増加である。7月以降は人口減少局面に入ったものの、「2020年1月1日現在人口」を下回る水準にまでは下がっていないということだ。 人口が減り始めた要因を確認してみよう。都の資料によれば、2020年の自然増減(出生数と死亡数の差)は1万8537人の減少であった。内訳は、日本人が2万1006人減、外国人は2469人増となっており、相変わらず日本人において亡くなる人が多く、生まれてくる子供が少ない状況が続いていることが分かる。 一方、社会増減(他の道府県との移動の増減)は、2万9618人の増加だ。日本人は3万7505人増えたが、外国人は7887人の減少であった。東京都は新型コロナウイルスの感染者が国内では突出して多いが、「過密都市は感染症に極めて弱い」という事実を知ってもなお、地方から引っ越してくる人の流れは止まっていなかったということだ。 外国人については、各年の「1月1日現在人口」をチェックすると、2014年から続いてきた増加の流れがストップした。コロナ禍で来日が困難になったことに加え、都内に働き口が減ったことが背景にあるのだろう。 自然増減および社会増減の数字を整理すると、少子高齢化に伴う人口減少を、他の道府県からの流入と外国人の出生数で補い、人口増加をもたらすという従来の構図は変わっていないことが分かる。「コロナ禍で東京一極集中の潮目が変わった」という見方も少なくないが、一極集中は依然として続いており、新局面に突入したと判断するのは早計のようだ。 一方で、これらの数字だけでは、東京都の人口が減り続けていることの説明としては足りない。そこで、総務省の「住民基本台帳人口移動報告」を確認する。数字の捉え方が東京都のデータとは異なるが、傾向を把握するには十分である。 同報告によれば、2020年の年間集計では「コロナ前」の1~3月の転入超過分という"貯金"もあって、最終的には3万1125人の転入超過であった。だが、2019年の8万2982人と比べると62・5%もの大幅減となっている。2019年の東京都は神奈川、埼玉両県の転入超過数の約3倍であったが、2020年は両県とほぼ同規模となった。 2020年度として見ても、東京都は7537人の転入超過であったが、2019年度は8万3455人なので、下落率はさらに大きく91%減となった。 月別に捉えてみると、転機が訪れたのは2020年5月(1069人の転出超過)であった。1996年から転入超過を続けてきたが、24年ぶりに転出超過に転じたのだ。6月こそ1669人の転入超過に戻ったが、7月に再び2522人の転出超過となり、以降12月まで続いたため、2020年は計7ヵ月の転出超過となった。進学や就職で人が動く3月には、前年を上回る数の転入超過となっていたが、政府の緊急事態宣言の発出を皮切りに、流れが大きく変わったということである。 46道府県すべてで東京都への転入者数が減っており、コロナ禍で東京都へ流入する勢いに陰りが見えた。特に減ったのは神奈川、埼玉、千葉の隣接3県および大阪、愛知、北海道、福岡といった大都市を持つ道府県であった。 他方、注目すべきは東京都を離れようという人は増えていることだ。9月は前年同月比12・5%、10月は10・6%、11月は19・3%、12月は17・1%もの伸びを示し、年間を通じての転出者は前年比4・7%もの大幅増となった。 東京都は転入者が減り、転出者が増えるというダブルパンチとなりながら、何とか転入超過を維持したということだ。しかしながら、ここまで転入超過幅が小さくなったのでは、自然減少をカバーし切れなかった。これが東京都の人口が減り続けている原因なのである。 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、多くの人がまだまだ知らない「人口減少」がもたらす大きな影響を掘り下げる。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)