バレー女子日本代表、「パリの12人」へ続くサバイバル チャンスを逃さないため必要なこと【迫田さおりさんコラム】
◆バレーボール女子元日本代表・迫田さおりさんコラム「心の旅」
好きな言葉は「心(こころ)」だという。バレーボール女子元日本代表のアタッカー、迫田さおりさんは華麗なバックアタックを武器に2012年ロンドン五輪で銅メダル獲得に貢献した。現役引退後は解説者などで活躍の場を広げながら、スポーツの魅力を発信しようと自身の思いをつづっている。 ■撮影現場でリラックスした表情を見せる迫田さおりさん
選ばれるかどうか…不安な日々
一歩を踏み出す勇気がなかった私とはお別れです。友人に誘われるたびに「やるやる」と口にしていたゴルフを始めて4カ月になります。昨年12月の誕生日を機にレッスンに通い始めました。正直に言えば、チャンスがあるのに「やらない自分が嫌」だったんです。 ロンドン五輪が行われた2012年を思い出します。誰もが「日の丸」のユニホームに袖を通せるわけではありません。バレーボール女子日本代表の登録メンバーは二十数人いても、最終的には12人に絞り込まれます。私は選ばれるかどうかぎりぎりの立場だったので不安な日々を過ごしていました。ライバルのことも当然気になっていました。 その時、頭に思い浮かんだのが鹿児島にいる家族の顔でした。「もし私がオリンピック選手に選ばれたら、喜んでもらえるかもしれない」。そう考えると「何が何でも選ばれたい!」ではなく「じゃあ、今できることに集中しよう」と前向きな気持ちになれました。 五輪の開催年に「12人」に入る可能性があること自体が奇跡。私は「一生に一度」だと思っていました。この年に、この場所にいるならば、チャンスは絶対に逃さない方がいい。「あの時、あそこまで選ばれたんだ」ではなく、最大限チャレンジしたい。私の中でギアが1段階上がりました。
絞り込み…頑張りや熱量も問われる
4月上旬にあった女子日本代表の始動会見では、懐かしい記憶がよみがえりました。今夏のパリ五輪出場権獲得が懸かるネーションズリーグ(5月14日開幕)に向けた代表合宿が本格化していく中、決意や緊張、そして重圧…いろんな顔が一堂に会しました。会見後の個別インタビューでは、注目選手が多くの報道陣やカメラに囲まれていました。 現役時代の私は一人でぽつんといた方でした。居場所がなくて「ここにいる意味があるのかな」と考えたりもしました。今回、私は何人かの選手に話を聞きました。口調からは不安を持ちながらも、一生懸命に一歩踏み出そうとする姿が伝わってきました。「私はこういうのが得意です」と胸を張ることは大事です。一方で「私でいいのだろうか」と、心もとなさを抱えながらもはい上がろうとする選手もいました。それも人間らしいじゃないですか。やっぱり「国」を背負う五輪イヤーは特別なんです。 これから選手たちは五輪の出場切符を取りにいくと同時に、合宿など絞り込みの場に身を置くことになります。眞鍋政義監督やスタッフは技術以外の頑張りや熱量にも目を向けています。過去は変わらないし、未来は誰にも分かりません。だからこそ「今できること」にフォーカスしてほしい。心から応援しています。 私の「ゴルフの旅」も、出発したばかりです。「焦らずに一歩ずつ前へ」が、今年のテーマでもあります。東京の練習場で師事するコーチによると、筋はいいみたいです。私、ボールを遠くに飛ばすことよりも、美しいフォームを身に付けたいんです。一緒に回るなら、鹿児島の父親でしょうか。バレーを応援してもらった恩返しとして、喜んでくれたらうれしいですね。 (バレーボール女子元日本代表、スポーツビズ所属)
西日本新聞社