【毎日書評】無駄なものを手放し、人生を清算するスキル「コピー化」のメリット
現代においては、日常的に大量の「可視化」「言語化」されたアウトプットが量産されています。しかしそれは、“もはや単に「可視化」「言語化」しただけでは時代に対処しきれない状況である”とも解釈できるのかもしれません。 『ひとことで整える 自分らしく売上とチーム力を上げる言葉の紡ぎ方』(堤 藤成 著、祥伝社)の著者によれば、そんな時代の鍵となるのが「コピー化」なのだそうです。 それは、自分や自社の「らしさ」の本質をつかんだ「キャッチコピー(ひとこと)」を紡ぐこと。さらに、紡いだことばをコピー機で刷るように、相手やチーム、社会の人々の心に「コピー(複写)」していくことなのだといいます。 これまでは、思考も「量産」できること、すなわち素早くアウトプットを量産するスキルが求められてきました。しかしこれからの時代は、むしろ無駄なものを手放し、人生を「清算」していくスキルが求められるというのです。 「言語化」は、言葉を「生産」する技術ですが。 「コピー化」は、人生を「清算」する技術です。 (「プロローグ」より) もちろん可視化や言語化も重要な技術ではありますが、それらで悩みを克服できないとき、「コピー化」の技術が役立つのだとか。 自分を「言語化」したのに情報量が多くて結局動き出せなかった人でも、「コピー化」することさえできれば、小さな一歩を踏み出すことができます。(「プロローグ」より) こうした考え方に基づく本書のなかから、きょうは「らしさのコピー化」の重要性とメリットを説いた第1章「なぜ『らしさのコピー化』が大切なのか?」に焦点を当ててみたいと思います。
「らしさ」をコピー化する技術とは?
そもそも、なぜ「自分らしさ」や「企業らしさ」を言語化する必要があるのでしょうか? 著者によれば、この問いに対するシンプルかつ究極の目的は「幸せに生きるため」なのだそうです。 その理由は、「自分らしさをコピー化する」ことによって“自分の進むべき方向性”が見えてきて、人生の羅針盤となるキャッチコピーを持てるから。また、相手の頭にコピーを複写することで、意図する仕事のチャンスも増えるようです。したがって結果的に、自分らしさを活かせる時間が増え、幸せに生きられるということ。 つまり、意図的に幸せな時間を増やすためには、自分らしさを表現する言葉を持っておくことが重要なのです。(50ページより) これは、やみくもに森のなかを歩くよりも、コンパスを持って歩いたほうが迷いにくいという感覚に似ているそう。 別な表現を用いるなら、「自分らしい人生とはなにか?」について考えず無意識的に生きるのではなく、それをことばにして意識する。そうすれば、その生きがいに少しでも近づこうと意識が働くため、結果的に充実した人生を送ることができるというわけです。 したがって、自分らしさの土壌としての存在意義(英語でいうところの「パーパス(PURPOSE)」)を可視化、言語化しただけで満足するのではなく、最終的に「コピー化」して世の中に複写していくことが大切だというのです。(49ページより)