「劇的な進化が描かれていた…!?」ガンダム作品「MS・MAの飛行技術」に訪れたイノベーション
■グリプス戦役からは、可変機の時代に突入
『機動戦士ガンダム』から7年後の、宇宙世紀0087年を描いた『機動戦士Zガンダム』では可変機が数多く登場。大気圏内で変形を行うことで、MSやMA単体でも飛行能力を有する機体が活躍する。 その最初期に登場したのがUFOのような見た目をした可変MA「アッシマー」だ。『ガンダム モビルスーツバイブル 102号』(デアゴスティーニ・ジャパン)によると、「ド・ダイYS」のようなサブフライトシステムには、上昇能力が弱いという欠点があった。 しかし、アッシマーはこの欠点を解消し、大推力と「リフティングボディ構造」と呼ばれる飛行に適した円盤形状により、単独での大気圏内長距離飛行を実現した最初の機体である。 アッシマーの空戦能力が輝いたのは、『Zガンダム』の第14話「アムロ再び」の回だ。主人公カミーユ・ビダンが乗る「ガンダムMkーII」と、クワトロ・バジーナが乗る「百式」という2機を相手にしながら、ブラン・ブルタークが搭乗するアッシマーは互角以上の戦いをみせる。 飛行能力を持たないカミーユとクワトロの両機は、空を自由に飛び回るアッシマーを捉えきれず、散弾を用いた攻撃も有効打になりえなかった。 アッシマーは2機を空中戦で翻弄したうえ、カミーユたちの母艦「アウドムラ」のブリッジを破壊寸前まで追い詰めた。
■MS単体での飛行能力を実現…!
さらに時代は流れ、宇宙世紀0105年。劇場版『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』で、主人公ハサウェイ・ノアが乗った「Ξ(クスィー)ガンダム」には、「ミノフスキーフライトユニット」が搭載される。これはミノフスキー・クラフトを発展させた技術であり、人型のMSに重力下浮遊能力を実現させた画期的な最新鋭MSである。 この技術によって、同じユニットを搭載した「ペーネロペー」と、これまでにないスピード感あふれる空中戦を展開した。 そして時代は宇宙世紀0152年。アニメ『機動戦士Vガンダム』に登場した「V2ガンダム」には、ミノフスキー・クラフト、ミノフスキー・フライトユニットをさらに進化させた、「ミノフスキードライブ」という技術が採用される。 従来の「浮かんでいるだけ」だった技術と異なり、重力下でもそのまま飛行可能な推進力に変換できるという画期的な技術だ。そのスペックはブースター等を使用しなくても、亜光速まで加速が可能とされている。 ちなみに、このミノフスキー・ドライブは未完成であり、強力な“メガ粒子”と化した余剰エネルギーが機体背部のユニットから放出される欠陥を有する。この欠陥は通称「光の翼」と呼ばれ、僚機を傷つけかねない危険な代物だった。 しかし主人公ウッソ・エヴィンは、卓越した操縦技術によって「光の翼」を攻防一体の武器として活用。劇中の最終決戦では「リグ・コンティオ」を光の翼で切り裂き、超火力の「ゴトラタン」が放ったメガ・ビーム・キャノンを機体ごと光の翼で弾いてみせた。 ガンダム作品に登場する多くの機体は、宇宙空間では自由自在に飛行するため、地球上での飛行技術の進歩はあまり気にしていなかった人も多いだろう。しかし、宇宙世紀という括りだけみても、しっかりと重力下での飛行技術の進歩が描かれており、こうした細かい設定描写こそが、作品のリアリティを感じさせてくれる部分なのかもしれない。
クロハチ