「たまごスープ」発売から30年、成長が期待されるフリーズドライ製品市場
近年、多くのフリーズドライ製品が注目されている。お湯で簡単にもどせて、どこでもおいしく食べたり飲んだりできる加工食品だが、誕生からこれまで長い歴史があり、最新の技術が集約されている。日本には複数のFD製品のメーカーがあるが、MCフードスペシャリティーズ(本社・東京)の「たまごスープ」はこのほど発売から30年を迎えた。1987年に同社前身の協和発酵工業(現・協和発酵キリン)が、即席麺の具材などの製造で培った製法技術を生かし、業界に先駆けて発売したものだ。インスタントスープ市場に新たなジャンルを確立し、1993年には年間約5000万食を販売したこともあるロングセラーである。
フリーズドライは素材本来の色や香り、味わい、栄養分などを損なわないようにする製法で、調理した食品を急速凍結して、高真空状態で乾燥させる。乾燥前の原型を保ちやすく、お湯を注ぐと元の食品に戻る特徴がある。軽量で手軽に持ち運びできるため、家庭の食卓のみならず、ハイキングなどのアウトドア活動や出張先などでも手軽に味わうことができる。 フリーズドライ製法が普及する以前は、インスタントラーメンの具材などに熱風処理した野菜などが使われていたが、食品本来の味や風味が損なわれてしまうデメリットがあった。製造技術の向上によって、定番のみそ汁やスープのほか、おかゆ、カツ丼やカレーなど商品の幅も広がっている。こうした中、手軽においしく食べたり飲んだり出来ることから、一人暮らしの若者や独居のシニア層などの消費者のニーズが高まり、小売店やスーパーなどでの取り扱いも増えている。 こうした傾向はデータにも表れており、調査会社インテージによると、フリーズドライのスープ、みそ汁製品の市場規模は、2011年に約67億円だったが、その後は右肩上がりで増えており、16年は140億円超にまで成長している。こうした中で、MCフードスペシャリティーズの「たまごスープ」のようなロングセラーも生まれてきた。 ふんわりなめらかな卵の食感と、鶏ガラと昆布の合わせだしで仕上げたスープはどんな料理にもマッチし、一食当たりのカロリーも低くヘルシーだ。製造にあたっては年間700万個の卵が使われているという。 30年前の発売当初から、基本的な味は変わらないものの、包材の品質向上や窒素ガスの活用などで長期保存が可能になり、従来18か月だった賞味期限も24か月に伸びた。この結果、災害など、いざという時に備えておきたいというユーザーのニーズにも応えている。外国人のユーザーも多く、同社は今後、海外展開なども検討するという。 多くのメーカーが競い合う中、今後も様々なタイプの新製品が生まれてくることが予想され、フリーズドライ製品市場は今後、一段と注目されそうだ。 希望小売価格は、1食=100円(税別)、5食袋=500円(税別)。 (3Nアソシエイツ)