国際リニアコライダー計画で会見(全文2)素粒子物理の将来は「線形」加速器
「線形」で素粒子を衝突させる技術的トライが成功
90年代におきまして、今申し上げましたように、3つの研究所ならびにそのほかの大学におきましても、この問題をどのように解決をするのかという取り組みが進んでおりました。当時、私個人的には、その成果ということにつきまして少し悲観的だったものであります。その直線、線形においてビームを衝突させるということを加速器を使って実現できるのかどうか悲観的であったわけでありますが、一方で2000年ぐらいまでにこの2つの技術、共に成果を見る、成功を収めるということがありまして、このような形で当時問題になっていた、どのようにして衝突をさせるのかという技術はこの2つの技術を、テクノロジーを使うことによって解決を見たところでありました。 ですから、この20年代におきまして、このような形で方向が出る中にありまして、今後どのようにこの加速器をつくっていくのか、設計をしていくのかということについての議論が始まったのであります。私自身、2002年の段階におきまして、アメリカで設置をされました委員会の委員長を務めることになりました。この委員会は素粒子物理の長期的な課題について、検討する委員会でございまして、グローバルなレベルにおいて、今後、素粒子物理の研究の方向をどのように定めていけばいいのかということを検討したところでありまして、その第一の課題が、長期的に高エネルギーの線形加速器をどのように実現をしていくのか、そして、それを優先課題にしていくことをどのようにするのかということについてでありました。 2002年からこのような形で研究が行われ、そして、あらゆる研究の結果について見てみますと、これはグローバルにおいてそうだったわけでありますが、素粒子物理における探求をする将来のマシンは線形加速器であるということでありました。
理想的にはアジア。それも第一の選択として日本にしてはどうか
そこで、次の課題となったのは、どのようなテクノロジーを実現するために使えばいいのかということでありました。すなわち常温の加速器をつくるのか、それとも低温の加速器をつくるのかということでありました。両方の可能性は当時から存在をしていたわけでありまして、当時2004年の段階、私が委員長をさせていただいていた委員会におきまして、その委員会の中には日本の素粒子物理の研究者だけではなく、中国や韓国、欧州、カナダ、アメリカの研究者も参加をしていたところでありますけれども、この委員会の結論として、超電導の加速器をつくるべきだということになり、それが今日のILCにつながっているところであります。 この超電導技術を今後、将来の加速器に応用する技術として使っていくということは、非常にこの点について理解をすることが大切だと考えております。と申しますのも、今、グラショー先生からもお話がありましたけれども、さまざまな数万に及ぶ加速器が現在使われており、そしてそこで使われているさまざまな技術というものを未来のマシンに応用していく、そういった現在の加速器というものは医療目的や薬事目的などで使われているものでありますけれども、そういったものを応用することによって、ILCに応用する準備ができているのだということです。 その上で次の課題として存在したのが、このマシンをどのようにそれらの技術を応用しながら設計をしていくのかということでありました。この点につきましてもILCの場合は非常にユニークな取り組みをしてきたところであります。GDE、Global Design Effort、グローバル設計チームというものがつくられまして、まさに国際的な形の取り組みが実現をしたわけであります。世界中から最良の専門家を集め、そしてこの問題を解決するためにどのような設計を実現すべきなのかということの議論が交わされ、これらを通じて比較的コストを抑えながら物理が解決を目指している目標をどのように実現するかということに取り組んでまいりました。 【これの 00:37:23】の研究、設計に関わる研究が終了に近づく中にあって、このマシンをどこに設置すべきかという議論が行われたところです。その議論の中でおそらく理想的にはアジアがいい。それもまず第一の選択として日本にしてはどうかということが国際研究コミュニティーの判断であったということであります。従って、設計の最終段階に至る状況の中にあって、日本で、では、どのようにしてこのILCを付ければいいのかという議論が行われました。 われわれが関わった設計の内容につきましては、日本の専門家の皆さまから非常に繰り返し検討を受け、さらには国際的な研究者の間でもいろいろと議論が交わされたところでありまして、そのようなプロセスを通じて非常にしっかりとした技術的な、技術的にしっかりとした設計が出来上がったわけです。 これらの取り組みを行う中にあって、さらにこのILCの取り組みを強化していかなければならない、その意思をさらに強くさせるような発見がありました。言うまでもありません。ヒッグス粒子の発見です。 まさにわれわれは今歴史のとば口に立っていると考えるものであります。これまでわれわれが夢と考えていたもの、そういった計画を現実のものにしていく段階にあるわけです。その意味におきまして、日本でILCをぜひつくっていただくことを期待したいと思います。ありがとうございました。 司会:どうもありがとうございました。それではお2人に質問をお受けしたいと思います。挙手いただきまして。 【連載】国際リニアコライダー計画で会見(全文3完)へ続く