自閉症のオーウェンはどうやって言葉を取り戻し、映画に主演できたのか?
オーウェンは2歳のときに突然、自閉症により言葉を失ってしまった。しかし、両親と兄の温かな愛情に支えられながら、言葉やコミュニケーション能力を奇跡的に取り戻していく。そのきっかけとなり、今でもオーウェンの生活、そして人生の一部となっているのがディズニー・アニメーションだ。 4月8日公開の『ぼくと魔法の言葉たち』は、オーウェンの視点から描かれたドキュメンタリー映画。同作は今年度のアカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞にノミネートされたほか、数々の映画賞を受賞している。 このほど来日したロジャー・ロス・ウィリアムズ監督は、オーウェンとその家族の真実の奇跡に感銘し、映画化を決めたという。映画の中で印象的なのは、オーウェンの自然な語りかけやディズニー・アニメーションの効果的な挿入。これらの実験的な試みの舞台裏をはじめ、米国における自閉症の人々と彼らを取り巻く現状などについてウィリアムズ監督にたずねてみた。
オーウェンが観客に語りかけるような映像はこうして撮影された
──撮影で難しかったことは? オーウェンに自分の話をしてもらうのは非常に難しいんですよね。直接インタビューをしても、うまく目線を合わせることができません。そこでじつはインタートロンという技術を用いて、スクリーンに取り付けたカメラで撮影してます。その場所に監督がいなくてもいいというものですね。 オーウェンは小さいころからずっとテレビを見て育ってきていますから、スクリーンを見るのには慣れていて、これなら容易に目線を合わせることができます。画面には僕が映っていて、対話ができるわけなんですね。質問したり、彼の人生経験に合わせてディズニー・アニメーションのクリップを用意して、その瞬間流したりもできるのです。オーウェンは直接こちらを見ながらセリフを言ったり、ディズニー・アニメーションに合わせたアクションをしてくれたりしました。この手法で観客の方に直接、彼の視点から彼の物語を体感していただけるような映像が撮れたのです。 実験的な手法だったし、準備に幾週間もかかりました。寝室のシーンなど非常にシンプルに見えると思うのですが、じつはこういうからくりで、よいものが撮れたと思っています。