「命の輝きは長さによるものではない」小児がんと戦う子供の"伴走者”「CLS」の知られざる重要性
しかし、CLSは笑顔だけで過ごすことはできない。小児がんは治る病気になったとはいえ、厳しい現実に向き合うケースもあるのだ。 「お子さんを見送るときの気持ちはいまだに揺れています。アメリカ時代に、ホスピスでもボランティアをしていたんですが、そこに『命の輝きというのは、長さによるものではない』という詩が書いてあったんです。命の時間が長くても短くても、ひとつひとつがすごく大切で素晴らしいものだということが書かれていました」 そして、佐々木氏は、一呼吸置き、涙ぐみながらこう話す。 「それは、実際子供たちを何人も見送ってきて、実感としてあります。一般的な命の長さとは違っても、この子の人生、お父さんとお母さんをはじめ、家族にこれだけ愛されて、これだけたくさんのお友達に見送ってもらってかっこよかったよね、すごく楽しかったねって。私も含めて色々な人に影響を与えて、豊かになっている人がたくさんいるよと心から思っています。 悲しさとか寂しい気持ちが、それでなくなる訳ではないんですが、その子と過ごさせてもらった時間を大切に、私もこれから先、生きていこうと思っています」 ’23年、佐々木氏ら、小児がんに携わる支援者たちなどが中心となって、子供たちのために、「愛知こどもホスピスプロジェクト」をスタートさせた。現在、病院併設ではない、医療や福祉の制度から独立したコミュニティ型のこどもホスピスがあるのは、横浜と大阪の2ヵ所だけとなっており、名古屋でのホスピス設立に向けて活動を進めている。 「病院で働く中で出会った同じ思いを持つ看護師やドクター、元患者のお母さんたちと一緒に進めています。アメリカのホスピスの経験がずっと心に残っており、子供たちにとっては、そういう場所がとても大事だと常に思っていました。 やはり病院の中だけでできることは限られているので、子供たちには地域の中で育って大人になってほしい。病院の中で完結するのではなく、地域で病気や障害を抱える子供を支えていく社会、優しくて温かい社会になってほしい。そういう願いを持って活動しています。 病院の中だと、どうしても医療が一番優先され、病気に負けない、打ち勝つ、治すことだけが目標になってしまうこともある。こどもホスピスは治る、治らないということではなく、どう生きるか、生き方を大事にしようという考えのもと、病気や障害のある子供と家族が、安心してのびのびと楽しい時間、子供らしい時間を過ごせる場所です。ホスピスは地域と共にあり、ボランティアの方々なども、生き生きと働いている。『愛知こどもホスピスプロジェクト』は『存分に生きるを、一緒に』を理念として掲げ、子ども達の命の輝きに寄り添っていきたいと思います」 取材・文:中西美穂 ノンフィクションライター。NPO法人サードプレイス代表。元週刊誌記者。不妊治療によって双子を授かり、次男に障害があることがわかる。自身の経験を活かし、生殖補助医療、妊娠・出産・育児、障害・福祉を中心に取材活動を行う。本人X(@thirdplace_npo)
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