「活動自体が犯罪」「こんな娘に育って親がかわいそう」SNSで強烈なバッシングを受けながらも、医大生が実名顔出しでHPVワクチンの情報発信をする理由
性に奔放な人が子宮頸がんになるという誤解
医学を学んで初めて知ったHPVワクチンのこと。リスクもベネフィットも学び、HPVワクチンと検診で子宮頸がんが防げるというデータが国内外から集まっていることも知った。「あのとき知識があったら接種していたかも…」という思いで打とうと決め、5万円の費用を出して接種した。 同時に「自分の命を守る大切な情報なのに、誰も教えてくれなかったのはなぜ?」という疑問が湧いた。 「私は姉や大学から情報を得られましたが、同世代の友人はどうなるんだろう、と。これから結婚したり、キャリアに邁進したり、さまざまなライフプランがある中で、5年後10年後に、知らなかったせいで子宮頸がんになってしまったら…と想像すると、放っておけないと思ったのです」 中島さんにはもう1つ、忘れられないエピソードがある。ワクチンを接種すると告げたとき、母から『子宮頸がんになるのは性に奔放な人だから、あなたにはそういう子になってほしくない、そうなるつもりはないでしょう?』と言われたことだ。 当時、なんとなくモヤモヤした気持ちを持ちながらも反論できなかった。「自分にも誤解していた部分があったから」と中島さんは言う。 子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)は、性交渉で男性にも女性にも感染するウイルスだ。「性交渉の回数が多い人が感染するというのは誤解で、一度でも性交渉があれば感染することはあり得ます。ワクチンを接種するのに、性に奔放かどうかは関係ありません。それにそもそも性に奔放かそうでないか、家族に伝える必要もないことですよね」 当事者なのに正しい情報を知らず、デマに惑わされてしまう状況こそが問題――。大学には、同じ課題感を持つ仲間がいた。最初は周りの人を助けたいという気持ちだったが、しだいにやるなら全国へ広げたいという想いが強くなった。 「知らないまま、後悔してほしくない」「これは自分たちの課題。当事者だからこそ伝えられることがある」という想いが、学生団体Vcanの設立につながった。