横浜FMの斎藤はザックJのジョーカーになれるか?
ジョーカー候補は3人
現時点のザックジャパンにおいて、サイドからのドリブル突破を武器とする「ジョーカー」候補は齋藤を含めて3人いる。25歳の乾はまだ代表におけるゴールはないが、2部を含めてブンデスリーガで2年間、計63試合に出場した経験が生み出すアドバンテージは大きい。外国人特有の間合いや距離感を肌に刻んできたことに加えて、1部のフランクフルトで6ゴールをマークしている点も見逃せない。 もう一人の原口元気(浦和レッズ)は、東アジアカップの中国代表戦と韓国代表戦に先発した。韓国戦の後半ロスタイムには、中央付近から左サイドを果敢にドリブルで突破。マークに遭いながら放った左足からのシュートは相手GKに防がれたが、こぼれ球を柿谷曜一朗(セレッソ大阪)が押し込んで劇的な勝利をあげた。 23歳の齋藤に対して、原口はひとつ下の22歳。水沼氏は韓国戦における原口のプレーが、「今現在の齋藤に欠けているもの」と指摘する。 「原口はギリギリのところまで、倒れながらでもプレーを続けられる。ペナルティーエリアに入るまでプレッシャーに耐えていけるか、という点も齋藤には求められると思う。実際、齋藤は昨年のロンドン五輪ではジョーカーになりえなかった。それは、対日本人の間合いが感覚として残っていたから。齋藤がどれだけインターナショナルレベルでできるか。今回のオーストラリア戦ではまだ分からないけど、今後も代表に呼ばれて、対外国人の経験を積んでいけばもっと自信が膨らみ、面白い存在になると思う」 8月14日には宮城スタジアムでウルグアイ代表との国際親善試合が行われ、すでに乾を含めた13人のヨーロッパ組に招集レターが送付されている。発表は来週後半の予定で、東アジアカップ初優勝を達成した直後にアルベルト・ザッケローニ監督が触れた「今すぐ日本代表に呼びたい選手」に齋藤が含まれるかどうかは微妙だ。しかし、「和製メッシ」と形容された相手ゴール前での細かいステップは乾や原口にはないものであり、ジョーカーとして十分に魅力的でもある。 東アジアカップでつかんだものはあるか、とレイソル戦後に聞かれた齋藤はこんな言葉を残している。 「チームが違いますからね。ザックにはザックのやり方があったし、マリノスにはマリノスのやり方がある。ここで代表がどうのこうのと言うことはないけど、見られる立場に変わったとは思っている。今日みたいに外していたらダメ、という感じですかね」 シュート数が後半26分に放ったわずか1本。得意とする左サイドから切り込みながら、右足からのミドルシュートが相手GKの正面を突いてしまったシーンが残念でならないのだろう。課題を克服していった上で、ゴールという結果も残す。もっと貪欲に、もっと高みを見つめて。169cm、68kgの小さなドリブラーの挑戦は続く。 (文責・藤江直人/論スポ)