坂東玉三郎、大阪松竹座で『初春お年玉公演』 満席となった客席に喜び
歌舞伎俳優の坂東玉三郎が3日、大阪松竹座で行われた『坂東玉三郎 初春お年玉公演』の初日に出演した。玉三郎による初春公演は、今年も趣向を凝らした演目で観客を迎えた。 【写真】舞台上でも気品あふれる坂東玉三郎 『坂東玉三郎 初春お年玉公演』より 幕開きの『口上』で玉三郎は、新年のあいさつと今年で5年連続の開催となる大阪松竹座での初春公演を振り返った。コロナ禍真っただ中の2001年は道頓堀も人が少なく、感染対策で客席も1席ずつ空けていたが、現在では道頓堀の雰囲気も変わり、旅行客も増え、満席となった客席を見て、たくさんの人に観てもらえる喜びを語った。 地唄『残月』は「雪」と同じ峰崎勾当の作曲で、お正月に清々とした気持ちになってもらいたいという思いで選ばれた演目。幕が上がると箏と三弦が紡ぐ音が響くなか、玉三郎が命の儚さを静かに表現する。月夜に白地の衣裳が映え、華麗に舞う姿に誰もがうっとり見入った。 続く『長崎十二景』は玉三郎が30代後半に初めて手掛けた作品。1979年に初演され、1988年以来、約37年ぶりの再演なった。大正から昭和の初期に美人画で人気を博した竹久夢二が描いた『長崎十二景』から着想を得た作品で、「青い酒」「眼鏡橋」「凧揚げ」「灯籠流し」「出島」「十字架」「サボテンの花」「丘の青楼」「ネクタイ」「浦上天主堂」「阿片窟」「化粧台」の12枚の水墨画で構成されている。 幕が上がると、異国情緒あふれる音楽の中、玉三郎演じる女が『長崎十二景』の絵そのままに、酒をあおり、三味線を弾いたりして恋こがれる気持ちを紛らわし、松竹座初出演となる小波津亜廉演じる男を待っている。ようやく現れた男との逢瀬に気を取りなおし、踊って見せるなど、竹久夢二の絵を彷彿とさせる場面が次々と続きます。そして突然の雷鳴に雨宿りする2人は阿片煙草を飲み、幻想の世界へ。先ほどとはうって変わった世界観に、客席からは思わず感嘆の声が漏れる。最後に男が別離を告げる手紙を渡し去っていく場面では、愛する人を思い慕う女心が胸を打ち、熱気あふれる中で幕となった。 1月の大阪松竹座は、8日まで『坂東玉三郎初春お年玉公演』、続いて1月11日から26日まで『片岡仁左衛門坂東玉三郎初春特別公演』を上演する。仁左衛門と玉三郎の大阪松竹座での顔合わせは19年ぶりとなる。