「救急車使えない」観光客搬送で地元住民困惑…観光名所で模索されるオーバーツーリズム対策
政府観光局は15日、4月に日本を訪れた外国人客が前年同月比56・1%増の推計304万2900人だったと発表。単月としては3月の308万1600人に次ぐ、過去2番目に高い水準となった。観光名所ではオーバーツーリズム(観光公害)が深刻化しており、各自治体で住民生活との両立を模索する動きが進んでいる。 【一覧で見る】政府のオーバーツーリズム対策パッケージ主な事例 外国人観光客や修学旅行生でにぎわう京都では、特に清水寺や金閣寺をはじめとした人気スポットに国内外の観光客が押し寄せ、住民の生活を脅かしている。 市バスの混雑緩和を目的に京都市が6月に新設するのが、JR京都駅と清水寺などを結ぶ「観光特急バス」だ。停留所の数を絞り、土日祝日などに限って運行する。運賃は均一運賃(230円)の約2倍にあたる500円に設定。多くの観光客が利用する「地下鉄・バス1日券」でも乗車できる一方、住民の利用者が多い定期券や敬老乗車証などは使えない。 このほか主要観光地以外の魅力を発信する、いわゆる「分散観光」を促すイベントを開催。京都市ではホテルや旅館などの利用者に課す「宿泊税」の見直しも検討中だ。 世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」を構成する高野山(和歌山県高野町)では、年間観光客数が約139万7700人と同町の人口(2641人)の約500倍にのぼる。救急車が2台しかなく、観光客の搬送時には地元住民を救急搬送できない事態も生じている。 このため同町は今年、令和10年4月をめどに、観光客に課す入山税のような形式の「法定外税」を導入する方針を打ち出した。駐車場やトイレ、ごみ置き場の清掃、町内のインフラの維持管理の原資とする予定だ。 大阪府でも、インバウンド(訪日外国人客)を対象にした「徴収金」制度の創設を検討。国籍を問わず1泊7千円以上の宿泊客に課税している最大300円の宿泊税に上乗せし観光公害対策などに活用する方向で、導入されれば全国初となる。 当初は来年4月の2025年大阪・関西万博開幕に合わせた導入も視野に入れていたが、先月、吉村洋文知事と意見交換した博覧会国際事務局(BIE)のケルケンツェス事務局長が、万博閉幕後の導入を要望。検討会議では、有識者から「外国人への不平等な扱いは許されていない」といった意見も出た。 吉村氏は15日の定例記者会見で「(インバウンドに)快適に楽しんでもらいながら地元と共存するため、一部の財源をお願いしたい。誤ったメッセージにならないよう努めたい」と釈明した。(堀口明里、永山裕司、山本考志)