レジェンド、澤、悔いなき最後のW杯
レジェンド、澤穂希(36)の出番は、想定よりも早く訪れた。佐々木監督は、「苦しいときに流れを変えてもらいたい」と、澤起用のパターンを語っていたが、前半16分までに大量4失点。セットプレーからハイボールではなく、グラウンダーを使うという日本を研究し尽くした奇襲を仕掛けられ、守備陣を含めチームは動揺していた。 前半32分、佐々木監督は、守りでミスを犯すなど、精彩を欠いた岩清水に代えて澤を投入した。ボランチの阪口がセンターバックに下がり、澤は宇津木とボランチを組む。この時点でのスコアは、1-4。澤に攻撃のリズムアップを託す。後半7分。宮間がゴールから遠い位置で得たフリーキックをGKソロに向かって上げた。澤は、大儀見と縦の関係を保ちながら、後ろ向きでなだれこんだ。その澤のヘッドに懸命に競りかけたジョンストンのクリアボールはゴール右へ。ソロが飛びついたが、ボールに触れることができずにオウンゴールとなった。2点差に詰め寄る2点目は、澤のテクニックが生み出したゴールだった。 澤は中盤でのプレスと読みで何度もボールを奪う。 後半33分に、互いに「素晴らしい歴史に残る選手」と、リスペクトをしている35歳のワンバックが大歓声の中、投入されると、そのライバルがクリアミスしたセカンドボールを澤が奪いとった。宮間も、セットプレーでは澤をターゲットにしてボールを集めていく。 36分過ぎには、右サイドを抜けそうになるワンバックをイエローカードをもらってまで倒して止めた。とても、今大会を最後にワールドカップ引退を決めている選手とは思えぬ動きだった。 だが、あまりに序盤の大量失点は大きかった。 試合終了のホイッスルを聞いて、澤は、GKの海堀のそばにかけ寄った。涙はない。 「失点を早い時間帯でしてしまいました。私は、外から見ていたんですが、取られちゃいけない時間帯に3失点は痛かったかなと思います。でも、今、みんなが持っている力をすべて出し切りました。これが自分たちの結果だと思います」 澤らしく冷静に試合を振り返った。