引退発表で鳥栖のFトーレスが明かしたサプライズなセカンドキャリア計画
サプライズに映るセカンドキャリアを明かしたトーレスは、すでに具体的なビジョンも描いていた。プリンスリーグ九州で連覇を達成し、キャプテンを務めていたMF松岡大起(18)が飛び級でプロ契約を結んだばかりのサガン鳥栖U-18を含めた、若手選手の育成に携わる仕事を望む。 「クラブを強くするためには、まずはユースの選手たちが感謝の気持ちやクラブへの愛を抱いてプレーしていかなければいけない。ヨーロッパの若手は自信と誇りをもってプレーしている。日本の若手が見習うべき点であり、実際にはできるのに、自信がないことで力を出し切れていない面がある。そこを伸ばせるような環境を作っていけば、クラブもさらに強くなっていく」 ヴィッセル戦翌日に引退イベントを行った後に、トーレスは生まれ故郷のマドリードへ一時帰国する。その後は年内に数回来日する約束が交わされていて、竹原社長もスペインへ渡るタイミングを計りながら、将来へ向けて意見を交換していく。 サガンは2018年度決算で4期ぶりにして、J1に昇格した2012年度以降では最高となる5億8100万円の赤字を計上した。1月には約6億円の第三者割当増資を実施。債務超過状態を何とか免れ、J1およびJ2への参加資格を失う最悪の事態は何とか回避した。 竹原社長は収支のバランスが悪化していると認め、いま現在はクラブのビジネスモデルを変えていると説明する。具体的には育成型クラブへの転換で、10年近くの時間をかけて強化してきたアカデミーが輩出した有望株たちを移籍させ、その際に発生する違約金で収入を増やしていく青写真を描く。 すでにサガン鳥栖U-18出身で、ポーランドで開催されたFIFA・U-20ワールドカップ代表を戦ったFW田川亨介(20)が、今年1月にFC東京へ電撃移籍。松岡も強い海外志向を抱くなかで、トーレスの存在は後に続くホープたちの成長を後押しし、サガンの改革を加速させるはずだ。 さらにトーレスは、トップチームの組織改革にも携わっていきたいと竹原社長に打ち明けている。まさに恩返しと言っていいトーレスの情熱の源泉をさかのぼっていくと、アトレティコからの退団を表明した昨年4月以降に、竹原社長との間で進められた移籍交渉に行き着く。 ヨーロッパから見て極東に位置する日本へ行くことも、そのなかでも地方クラブのサガンへ移籍することも問題はなかった。トーレスが難色を示したのは、昨夏の時点でサガンがJ1の17位に沈み、熾烈な残留争いを強いられていたことだ。