【社説】地方自治法改正 上意下達の拡大は認めぬ
■分権が施策に支障?
国が自治体への介入を強める傾向は今に始まったことではない。 省庁が自治体に策定を求める行政計画は、2000年以降も地方側が是正を要請するまで増え続けた。小規模な自治体では日常業務に支障が出るほどだった。 計画策定が補助金や交付金の要件とされたため、自治体は応じざるを得なかった。かつての上意下達を思わせるやりとりだ。 地方創生も同様で、自治体の計画を国が査定し、交付金を配る手法で展開された。 3年前に総務省が作成した研究会の資料には「地方自治や地方分権が新型コロナ対策やデジタル化の施策の支障になっている」という趣旨の記述がある。霞が関の官僚の本音ではないか。 とりわけ行政のデジタル化は、自治体を画一的に統制できる方が都合がいいようだ。岸田文雄首相もデジタル行財政改革に関連して「国と地方の役割を再定義する」と発言している。 分権改革への関心は地方でも低下していると指摘される。必要性のない国の指示権拡大に反対する声が少なかったのは残念だ。国の介入を傍観する自治体が増えるようでは、再中央集権化がますます進んでしまう。 佐賀県の山口祥義知事は県議会で「指示権が将来なし崩し的に適用され、地方自治の根幹を壊してしまうことにならないか」と懸念を表明した。同じ問題意識を持つ首長や地方議員はいるはずだ。 国と地方の関係をゆがめ、多様な自治を侵害する流れに、地方はあらがってほしい。 地方分権は、地域のことを地域で責任を持って決めるための改革である。今こそ、その意義を再確認しておきたい。
西日本新聞