アザ治療の「ピコレーザー」の効果はご存じですか? ダウンタイムや治療回数も医師が解説!
ピコレーザーによるアザ治療
編集部: 赤アザや青アザは、どのように治療するのですか? 小林先生: 赤アザに対して一般的に用いられているのは、「Vビームレーザー」と呼ばれるレーザーです。色素レーザーという種類で、赤色に反応して赤色の血管を破壊します。 編集部: Vビームレーザーについて、もう少し詳しく教えてください。 小林先生: Vビームレーザーは、レーザー照射時に、冷却ガスで照射部位を冷やしながらレーザーを照射するので、従来の機種より、合併症の少ない治療が可能です。「毛細血管奇形(単純性血管腫)」や「乳児血管腫(いちご状血管腫)」などの赤アザ、「血管病変」、血管が浮き出ている「毛細血管拡張症」の治療に使用されます。 編集部: 青アザの治療についてはいかがでしょうか? 小林先生: 青アザに対しては、色素系のレーザーが使用されます。これは青色、茶色、黒色に反応するレーザーです。これまで多く使用されてきた機種は、「Qスイッチルビーレーザー」と呼ばれるレーザーです。従来のレーザー装置よりも照射時間を短くして、ピーク出力を高めたレーザーであり、少ない副作用で深部の色素まで破壊することが可能です。 編集部: レーザー機器にも種類がありますが、青アザの場合はQスイッチルビーレーザーを用いるのですね。 小林先生: そうですね。最近では、新たに「ピコレーザー」というレーザー機器が使用されるようになってきました。ピコレーザーも広く捉えればQスイッチルビーレーザーの一種です。従来のQスイッチルビーレーザーがナノ秒(10億分の1秒)単位の照射時間であるのに対し、ピコレーザーはさらに短縮したピコ秒(1兆分の1秒)単位の時間で照射します。 編集部: ピコレーザーは本来、シミなどの治療で使うレーザーですよね。 小林先生: はい、そうです。ピコレーザーは極めて短い時間、レーザーを照射するため、少ない副作用でメラニン色素を破壊し、シミの改善を目指す医療機器です。シミにも用いられますが、アザや刺青(いれずみ)除去においても高い効果が認められています。 編集部: ピコレーザーとQスイッチルビーレーザーの違いは、照射時間の違いによるものですか? 小林先生: 照射時間の違いにより、作用機序が変わります。Qスイッチルビーレーザーは、温熱作用で色素を破壊していましたが、ピコレーザーでは、瞬間的に高いエネルギーを与えることで機械的なゆがみを与えるという、光音響作用により色素を砕きます。この働きが、特に刺青の色素に作用し、刺青を取るのに必要な治療回数を大幅に減少させました。 編集部: ピコレーザーは青アザに対して、効果が期待できるのですね。 小林先生: はい。青アザには、大きく「太田母斑」と「異所性蒙古斑」の2種類があります。太田母斑は生まれつき、もしくは、思春期から出現する主に顔の片側にできる青アザです。自然に消失することはないため、消すためにはレーザー治療が必要です。一方、異所性蒙古斑はお尻以外にできる蒙古斑です。10~12歳で消失することも多いですが、消えないものもあります。消えない可能性の高いものは、早期にレーザー治療をおこないます。いずれの青アザも、皮膚の深い部分(真皮)にメラニンがあるという特徴があります。太田母斑と異所性蒙古斑に対しては、ピコレーザー治療が2020年5月から保険診療となりました。