【詳細分析】米大統領選挙の「天下分け目」はどこか?バイデンとトランプの激戦州争奪戦
「3+1(スリー・プラス・ワン)」のフォーメーション
今年に入っても、バイデン大統領はペンシルベニア州を4回、ミシガン州とウィスコンシン州をそれぞれ2回訪問した(3月26日時点 図表3)。これらの3州は、同大統領にとって絶対に落とせない重点州であることは間違いない。中でも、ペンシルベニア州は最重点州と言える。戦略上の計算はこうだ。 バイデン大統領は、ペンシルベニア州の選挙人19を確実に取らなければならない。仮に選挙人15のミシガン州ないし選挙人10のウィスコンシン州のどちらかを落とした場合、選挙人16の南部ノースカロライナ州の選挙人で補足するしかない。選挙人11のアリゾナと選挙人6のネバダのどちらかの1州では不足分を補えないからである。 しかし、マリスト大学(東部ニューヨーク州)の世論調査(24年3月11~14日実施)によれば、ノースカロライナ州ではトランプ前大統領に3ポイントリードを許している。投開票日まで約7カ月あるものの、この状態が続けば「3+1」の戦略は破綻する。 選挙人獲得戦略には、ジョージア州やフロリダ州を含めた「サンベルト(南部および南西部の地帯)」の選挙人を獲得する戦略や、西部のアリゾナ州およびネバダ州を中心に選挙人を得る戦略もあるのだが、バイデン大統領は「3(ペンシルべニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州)+1(ノースカロライナ州):スリー・プラス・ワン」のフォーメーションを柱にして、今回の選挙に臨むと考えられる。
「激戦州の分類」と「選挙人の計算」
3月に筆者が参加したバイデン陣営の激戦州担当者と支持者によるオンラインミーティングで、この担当者はバイデン大統領が獲得できる州の選挙人を3分類して説明した(図表4)。彼によれば、バイデン陣営は民主党が圧倒的に強い州(青い州:青色は民主党のシンボルカラー)、やや民主党が強い州(薄い青色の州)と激戦州に分類している。 青い州には西部カリフォルニア州や東部ニューヨーク州などが含まれ、合計185の選挙人がいる。薄い青色の州には、コロラド州、東部メイン州、中西部ミネソタ州、東部ニューハンプシャー州およびバージニア州があり、合計41の選挙人がいる。一方、冒頭で紹介した7州を激戦州に挙げた。7州の選挙人の合計は93である。 バイデン陣営は226(185+41)の選挙人確保は可能であるとみているが、当選に必要な270に届くには、さらに44の選挙人を獲得しなければならない。ペンシルベニア州(選挙人19、以下同)、ミシガン州(15)、ウィスコンシン州(10)の選挙人の合計は丁度44である。これらの3州を確保できれば、バイデン大統領はギリギリ選挙人270を持って再選を果たせる。 2012年オバマ陣営の選対本部長を務め、現在は政治コンサルタントであるジム・メッシーナ氏は、ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンの3州の重要性に言及し、3州を獲得できれば選挙人270で当選できると分析している。 しかし、ミシガン州での民主党予備選挙(24年2月27日)では、投票率の約13%に当たる10万人以上の有権者が「支持者なし」に投票した。しかも、薄い青い州に分類されているミネソタ州での同党予備選挙(同年3月5日)では、4万5000人以上の有権者が「支持者なし」に投票し、「抗議票」が約19%を占めた。上の計算はミネソタ州での勝利を前提にしているので、仮に同州を落とすと、「3+1」のフォーメーションは崩れることになる。 ちなみに、フロリダ・アトランティック大学の世論調査(24年2月29~3月3日実施)では、ミネソタ州においてバイデン大統領がトランプ前大統領を支持率で8ポイント上回っており、ミシガン州と比較すると、アラブ系と若者の影響は大きくないかもしれない。