60周年の大改修 究極にサステナブルなゴルフ場とは? ~春日井CC
日本で初めてオリンピックが開催された1964年、名匠・井上誠一の設計により、春日井カントリークラブ(愛知県)は誕生した。折しも大型重機を使った造成が始まった時代。井上は東西36ホールを作るために山を削り、谷を埋め、当時としては最大量の440万トン(東京ドーム3.5個分)の土を動かしたと同クラブの10年史に記している。1969年に日本プロ、75年に日本オープン、80年に日本女子オープンの舞台となり、春日井CCはゴルフ史にもその名を刻んだ。
その一方、今年で開場60周年を迎えるコースは近年老朽化も目立つようになっていた。春日井CCを含む近隣5コースを運営する春日井開発株式会社の松岡茂将(まつおか・しげまさ)取締役は、初代会長である祖父が亡くなった3年前に経営に参画したが「正直このまま同じような運営をしていても、売却しなきゃいけないくらい大変になるんじゃないか」と愕然としたという。 コース内は、水量不足で高台にある芝の生育が悪かった。水圧を上げようと送水ポンプを交換したが解決せず、散水管を掘り起こしてみると鉄の成分で内部が目詰まりを起こしていた。「設備の老朽化に対するフィックスが全然追いついていなかったんです」と松岡さん。「それが資金難によるものだったら仕方ない話ですが、余力があるのに適正なところに投資しないのはもったいないー」。春日井の場合は後者だった。 発端は散水設計の見直しだが、それはコース全体を掘り返す大事業である。専門家に相談すると、さらなる戦略性アップや管理費を下げる施策があることも判明した。松岡さんは「ゴルフ場は他の事業と比べると箱がかなり大きくて、純益を上げていくことに苦労する面もあるんです」と捉えている。祖父が開き、父が継いだゴルフ場を「どうやって残していくか?」を考えた時、結論はより多くのゴルファーに楽しんでもらい、管理の手間やコストを下げ、経営を安定させられるようコースを近代化することだった。