ベトナム、対米貿易黒字急増で関税リスク高まる 業界に懸念
Francesco Guarascio [ハノイ 6日 ロイター] - ベトナムの対米貿易黒字が膨らんでいることから、トランプ次期米大統領が同国を次の関税の標的にする可能性があるとの懸念が業界関係者やアナリストの間で広がっている。 ベトナムにはアップル、グーグルの親会社アルファベット、ナイキ、インテルのような米国の多国籍企業が大規模な拠点を置いており、対米黒字が中国、欧州連合(EU)、メキシコに次いで4番目に多い。 米商務省が5日発表した貿易統計によると、1─10月の対ベトナム貿易赤字は1020億ドルと、前年同期比約20%増加した。 貿易調査団体のハインリック財団の貿易政策責任者デボラ・エルムズ氏は「トランプ氏にとって主要な指標は貿易赤字であり、ベトナムの数字は望ましくない」と指摘。ベトナムは米国に対して簡単には報復できないため、トランプ政権が早期に行動を起こす理想的な対象との見方を示した。 米商工会議所が先週、ハノイで主催したビジネス会議で上映されたビデオで、トランプ氏の息子で最高顧問のエリック氏は米国から「不当な利益を得た」国の一つにベトナムを挙げた。 この会議で企業や通商団体の関係者らは、米国がベトナムに関税を課す可能性について懸念を表明した。在ベトナム韓国商工会議所のホン・スン会頭は「新たな関税はベトナムの韓国企業にとって最大の懸念事項の一つだ」と語った。韓国のサムスン電子はベトナムから米国へスマートフォンや電子機器を輸出している。 <ナバロ氏の貿易顧問指名> 第1次トランプ政権で通商担当の大統領補佐官を務めたピーター・ナバロ氏が、貿易・製造業担当の上級顧問に指名されたことも懸念要因となっている。同氏はこれまでに、ベトナムへの関税は米国の貿易赤字を削減するために非常に効果的と述べている。 RMIT大学(ベトナム)のサプライチェーン専門家であるグエン・フン氏は、ベトナムの輸出の3分の1近くが米国向けとなっていると指摘。ベトナムが中国製品の組み立て拠点として利用されているとの懸念を払拭するために、ベトナムは製品や部品のトレーサビリティーを向上させる必要があると述べた。 ベトナムは液化天然ガス(LNG)や医薬品、航空機などの輸入を増やすことで、対米貿易黒字を減らせるとの見方もある。しかしエルムズ氏は「ベトナムが黒字を大幅に削減するために、迅速かつ十分な規模を輸入できる状況にあるとは思わない」と語った。