異例の新スタートアップ支援拠点「STATION Ai」が愛知の磁場に 大企業や金融人材も迎える理由
国内外から見た、愛知進出の魅力
──スタートアップのコミュニティ設計で心がけていることや、支援の強みはなんでしょうか。 愛知県の特徴のひとつが、先ほどお話した通り、既存産業が強いため、県外からメンバーになるスタートアップもさまざまな企業との繋がりに期待しており、ご紹介することは本当によくあります。 また、東京に比べて採用面で苦労する地域でもあり、採用支援のメニューを設けています。社会人向けの起業家支援プログラムをより充実させて、起業する人だけでなく、スタートアップで働きたい人のための場づくりもしていきたいと考えています。そこから入居企業への採用にも繋げていきたいですね。 ──「STATION Ai」の開業に向けて、フランスにあるヨーロッパ最大のインキュベーション施設「STATION F」や海外の大学とも連携しています。海外からの企業誘致はどのように呼びかけていますか。 現状では海外のスタートアップは少ないですが、10社以上がメンバーになっています。グローバルデーという名称で、定期的に海外スタートアップがピッチをしたり、県内企業とマッチングしたりする事例も出てきています。 アメリカや中国など、愛知県が連携協定を結ぶ地域や機関が多数あるので、スタートアップの相互支援も展開していく予定です。海外から支援先のスタートアップが来日する際は、我々が受け入れて市場調査や商談の機会も設けるなど、手厚くフォローしていきたいと思います。 ──フランスの「STATION F」は「STATION Ai」のモデルとなっていますが、そこからの学びでもっとも大きなことはなんですか。 私たちも施設運営のなかで、ビジネスとして安定的に収益を上げる必要があります。その時に最大のポイントはスタートアップや事業会社から継続的に人が集まるということです。ただコロナ禍を経て働き方が変わる中で、必ずしもオフィスが重要ではなくなってきました。 その点、「STATION F」は毎年1万社もの入居の応募があるそうです。私たちも現地で入居企業のヒアリングをしましたが、皆さん口をそろえて「場の価値」を感じていました。メタやグーグルなど、誰もが知る海外の大企業が30社程度入っています。一社あたりの入居するスペースも大きく、大企業とスタートアップの協業が前提になっています。そのため、スタートアップ側からすれば、協業先を探したり、協業期間のみ「STATION F」に足を運ぶことになります。 このような挑戦はしたいと思っており、大きな学びでした。つまり、それくらい本気でスタートアップと協業したい企業が国内外から集まる地域にしていかなくてはいけません。 愛知県はフィールドを提供するだけでなく、自ら旗振り役となり、事業機会を積極的につくっていくという珍しい行政機関だと思います。「STATION Ai」に来ると、新しい事業ができる。そんなチャンスの多いインキュベーション施設となり、地域づくりをしていきたいと考えています。
督 あかり