2024年注目の コマース トレンド5選:生成AIの活用から人手不足の解消まで 小売ビジネスを成長させる新たなトレンドとは?【前編】
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。 2024年注目の コマース トレンド5選:生成AIの活用から人手不足の解消まで 小売ビジネスを成長させる新たなトレンドとは?【前編】 2023年、新型コロナウィルスによる外出自粛の解禁により、街には徐々に以前の賑わいが戻ってきました。 コロナ禍による外出自粛やリアルな場での接客業務の削減は、多くの小売企業にeコマースやリテールテックの導入を促し、さまざまなDXソリューションを生み出しました。この流れは2023年も加速し、eコマースやリテールテックの市場はさらに成長を続けています。 たとえば、2023年に話題となった生成AIは徐々に実務の領域に応用され始めています。また、深刻化する人手不足や環境問題などの社会課題に対応するソリューションも続々と生まれています。 本稿では、コマース・リテール領域のスタートアップを支援するVCファンド「New Commerce Ventures」を運営している筆者が、その領域において2023年に話題になったスタートアップを振り返るとともに、2024年の注目トレンドを探っていきたいと思います。 2024年注目の コマース トレンド5選:生成AIの活用から人手不足の解消まで 小売ビジネスを成長させる新たなトレンドとは?【前編】 2024年注目の コマース トレンド5選:生成AIの活用から人手不足の解消まで 小売ビジネスを成長させる新たなトレンドとは?【後編】 ◆ ◆ ◆
1. 進化する業務ツール「生成AIネイティブSaaS」
Image via Typeface 2023年にもっとも話題になったテーマはGenerative AI(生成AI)でしょう。ChatGPTに始まり、LLM(大規模言語モデル)を活用したスタートアップが雨後の筍の如く生まれ、停滞する資金調達環境のなかで、多くのAIスタートアップが大型資金調達を実施しました。 コマース領域での生成AI活用では、まず商品画像や商品紹介文、広告、SNS投稿などのクリエティブ制作を支援するスタートアップが注目を浴びました。 タイプフェース(Typeface)は、ブログ記事やSNS投稿内容を生成できるサービスで、Adobeの元CTOが創業したサービスとして話題となりました。トリート(Treat)は、ECサイトの商品画像生成に特化したサービスで、商品の背景を自由に変更し、商品画像を生成、EC上でのCVR(コンバージョン)の向上に貢献しています。 商品画像の進化系として、アパレルのコーディネート画像においても生成AIが活用されています。ララランド.ai(Lalaland.ai)は、バーチャルモデルが自社のアパレルアイテムを着用した画像を生成でき、従来のモデルのキャスティングや撮影、画像編集という作業を削減しています。リーバイス(Levi's)が導入したことでも注目されました。 この投稿をInstagramで見る LALALAND(@lalaland.ai)がシェアした投稿 画像だけでなく、動画を自動生成するスタートアップも生まれています。ピカ(Pika)は、テキスト入力や画像アップロードなどをするだけで、簡単に動画を生成できるサービスです。オクソロ(OXOLO)は、商品ページのURLやテキスト入力により、商品紹介動画を生成することができます。 多くの魅力的なソリューションが生まれる一方で、大手企業も同様のソリューションを続々とリリースしています。Googleは、商品画像の自動生成やバーチャルモデルに衣服を試着した画像を生成する機能を公開。Amazonも既存の商品画像から複数パターンの商品画像を生成する機能をリリースしました。メタ(meta)は広告やSNS投稿用の画像生成AIを提供しています。 このように、コマース領域での生成AI活用は、大小さまざまな企業が乱立するレッドオーシャンとなっており、2024年は淘汰が進むと考えられます。 ホリゾンタルなサービスは、顧客基盤とデータを有する大手企業にとって優位であり、スタートアップは業界やユースケースに特化し、業務フローに深く入り込んだソリューションを提供する企業が成長すると考えています。 Image via Creative Force たとえば、クリエイティブフォース(Creative Force)は、アパレルブランドの商品画像の撮影・管理という業務支援ソリューションの機能として、AIによる画像生成を組み込み、業務効率化を支援しています。キャプションズ(Captions)は、映像制作における面倒な業務をAIにより補完する業務効率化ツールを提供しています。たとえば、「えー」や「あの」のような口語的な言葉を自動で削除できるほか、視線や唇の動きの修正、背景画像の削除やノイズの削除など、これまでマニュアルで作業していた業務を効率化しています。 2024年は、このようなAI機能を用いて業務フローを効率化する生成AIネイティブなSaaS(Software as a Service)に注目したいと思います。