総得票数からみる最近10年のベストナイン
毎シーズン終了後に各ポジションのベストプレーヤーを記者投票によって選ぶベストナイン。この投票結果に今年はちょっとした”異変”が起こっていたのをご存じだろうか。セ・リーグ261票、パ・リーグ221票だった有効投票数のうち90%以上の票を得てベストナインに選出された選手が8人もいたのだ。これは過去10年では最多の人数。とくにセ・リーグではヤクルトの4選手(中村、畠山、山田、川端)がいずれも90%以上の得票率で選出されている。トリプルスリーを達成した山田や柳田(ソフトバンク)、シーズン最多安打を更新した西武・秋山のように「文句なし」の実績を残した選手が多いシーズンだったこともあるが、レギュラーといえる選手が中村だけだったセ・リーグの捕手部門のように、リーグとして層が薄いポジションが増えてきていることも原因に挙げられるだろう。 このようにベストナインの結果を得票数まで細かくみていくと、受賞選手の名前だけみている時には気付かなかった球界の流れのようなものが感じられることがある。そこで今回は過去10年のベストナイン投票での得票数をポジション別に集計、それをランキング化することで10年間を振りかえる。
■投手 セはマエケンの1強、パは大谷時代の到来か
セ・リーグは9年間で3度ベストナインを獲得した前田(広島)が得票数でも断然の1位となった(表1-1)。10年間の総有効投票数に対するシェアは30%を超えていて、この数字がいかにリーグ内で抜きんでた存在だったかを物語っている。その前田も来シーズンはメジャーに移籍する。リーグのエースが抜けるシーズンは175票を獲って1度選出の菅野(巨人)、49票の小川(ヤクルト)、31票のジョンソン(広島)、26票の藤浪(阪神)らがその座を争うことになりそうだ。 パは2013年に満票を獲得した田中(ヤンキース)が1位、6年で2度選出のダルビッシュ(レンジャーズ)が2位と、メジャーで活躍する投手が上位を占めた(表1-2)。そして今シーズンは大谷(日本ハム)が213票と96.4%と断然の得票率で初のベストナインに選ばれた。この得票率は過去10年間の投手部門では2013年の田中(当時楽天)、2010年の前田(広島)に続く3位の数字。来シーズン以降もどんどん数字を伸ばしそうだ。今シーズン3票で2位タイだった涌井(ロッテ)は過去10年で3度の最多勝、2009年には沢村賞にも選ばれながらベストナイン投票では計61票で1度も選出されていない。ダルビッシュ、田中、大谷とハイレベルなライバルに阻まれ続けたがゆえの不運だといえるだろう。