子どもの不登校をAIで予測! 埼玉県戸田市が実証実験した結果は?
秋葉:昨年度(2023年度)の結果としては、高いリスクが示された児童・生徒のほとんどが、すでに学校で声かけを行い、スクールカウンセラーにつなぐなど見守り対象になっている場合が多かったことから、精度の高いシステムが構築できたと思っています。 ――不登校予測AIを導入されてみて気付いたことや、課題はありますか? 秋葉:幅広い情報を元にスコアを算出しているため、何が原因で不登校リスクが高まっているのかが分かりづらいという点はデメリットかもしれません。そのため、不登校リスクが高いと判定されたからといってやみくもに動くのではなく、担任をはじめ、児童・生徒に関わるさまざまな人が一緒に考え、データを参照し、最終的な判断をする必要があります。 また、今後「出欠席」以外にも「心の健康状態」や「体の調子」など、日々の様子をデータベースに加えることで、予測精度はより上がっていくと考えています。 ――他の学校でも使えると、助かる人が増えそうですね。 秋葉:そうですね。AIの性質上、蓄積データが増えることで、さらに精度の向上が見込めると思うのですが、人材確保と費用面を抑えることが大きな課題になっています。 戸田市は、昨年度(2023年度)までは実証事業採択団体として国の支援を受けられましたが、今年度(2024年度)は市の予算だけで進めています。そのため、データベースそのものの保守・開発等に係る予算は確保できても、新たに不登校予測モデルを運用・追加開発等する予算までは確保が難しい状況です。分析事業者とは今後の連携可能性を相談しています。 こうしたランニングコストや人件費を考えると、他の自治体にも広げるためには、基礎自治体の予算だけではハードルが高く、国の支援が必要なのではと感じています。 また、こうしたデータ利活用の取り組みを進める上では、法的な整理・対応等をどうしたらよいか困っている自治体も多いと思います。戸田市では個人情報保護法等を専門とする弁護士に指導・助言をいただきながら、「教育データの利活用に関するガイドライン」を策定し、個人情報保護法に基づいた安全管理措置等を講じると共に、希望者の個人情報をデータベース上から削除する、いわゆるオプトアウトを設けるなど、プライバシーにも配慮しながら取り組みを進めています。 こうした取り組みの成果や課題などの情報は市のウェブサイトで公開していますので、これから新たに取り組む自治体の参考になればうれしいです。