政権交代の可能性も? 不安定化するイギリス【WBS】
天皇、皇后両陛下は、かつて留学された思い出の地でもあるイギリスを、国賓として訪問されています。ただそのイギリスではいま、経済的に困窮する人々が増加。7月に行われる総選挙では政権交代の可能性も高まるなど国内政治は不安定さが増しています。 29日までの日程で、国賓としてイギリスを訪問されている天皇陛下は24日、高潮による氾濫を防ぐ稼働式の防潮施設テムズバリアを視察しました。 テムズバリアは、陛下がオックスフォード大学に留学されていた40年前に故エリザベス女王が参加して、開通式が行われた重要な国家インフラで、陛下は長年テムズ川や治水関連施設に関心を寄せられてきました。陛下はテムズ川の上に島のように点在する稼働壁を実際に歩いて、仕組みや果たす役割について、責任者の説明を真剣な様子で聞かれていました。 イギリスの発展を支え、住民に親しまれてきたテムズ川。この川沿いで24日に行われたのは、イギリスで初めてとなる駅伝大会。その名も「UK Ekiden」です。コースはオックスフォードからロンドン郊外のウィンザーまでのおよそ123キロ。オックスフォードやケンブリッジなどの大学チームに加えて、ミズノや大和証券グループなど日本やイギリスに拠点を持つ企業のチームなど18チーム合計180人の選手がたすきを繋ぎます。 箱根駅伝が今年、100回目となったことにちなみ開催された駅伝大会。日本発の競技をイギリスで開く狙いは一体何なのでしょうか? 大会を後援するイギリスの経済紙「フィナンシャル・タイムズ」のジョン・リディングCEOは「駅伝は日本から持ってきた素晴らしいシンボル。テクノロジーやAIに注目が集まる今、チームワークなどを強調するイベントには価値があり、モチベーションを高めてくれる。天皇陛下の公式訪問とも重なるので、とても素晴らしい」と話します。
政権交代濃厚のイギリス 背景に国民の生活苦
駅伝が話題のイギリスですが、総選挙で与党「保守党」が政権を失うとの見方が有力です。背景にあるのが国民の経済的な苦境です。片方が働いているカップルの貧困率を見ても、特に現在の保守党政権になってからこのように増加の一途をたどっています。 そしてイギリスの公的医療です。こちらは無料ですが病院には非常に長い行列ができています。治療を待っている患者は何と750万人を超えています。緊急性が高くないと判断されている患者が多いのですが、中には4か月から1年、あるいはそれ以上も治療を待っている人が半分近くも含まれています。 2016年の国民投票で決めたEU離脱「ブレグジット」により、EU圏から働きに来ていた看護師などの職員がイギリスを去ったことも原因とみられています。ブレグジットは経済にも打撃を与えています。イギリスへの投資は上昇基調にあったのですが、ブレグジットを境に停滞する状況になっています。 では将来イギリスがEUに再び加盟する未来はあるのでしょうか? 先ほどの「フィナンシャル・タイムズ」のジョン・リディングCEOにその可能性を聞きました。 「イギリス国民は感情的にも長く苦しんだブレグジット問題より、まずは目の前の問題を解決してほしいと考えている。ただ今後もブレグジット問題が消え去ることはない。世論は今も2つに割れていて、賛成派・反対派ともに互いの主張を叫び続けるだろう」 イギリス経済の前途は多難なようです。 ※ワールドビジネスサテライト