岸田首相、自民総裁再選へいばらの道-定額減税も支持率回復は望み薄
(ブルームバーグ): 岸田文雄首相は、定額減税と給付を含む5.5兆円規模の支援策で支持率の上昇を目指すが、9月の自民党総裁選を前に個人消費が力強く回復し、支持率が急回復する可能性は低そうだ。
6月から始まった定額減税は1回限りで、年収2000万円以下の納税者とその扶養家族ら約9500万人が対象となる。
1人当たり4万円の減税が受けられる予定だが、政府のエネルギー補助金の段階的な終了に伴い家計への減税効果は薄れる見通し。自民党派閥の政治資金問題が暗い影を落とす中、総裁続投に必要な支持率上昇への期待は後退し、早期の解散総選挙に打って出る自信にもつながりにくいだろう。
早稲田大学の中林美恵子教授は定額減税のタイミングについて、「おそらく総裁選の前に有権者に喜んでもらう、あるいは総裁選の前に総選挙を行う」ことを狙ったものだと指摘。ただ、足元の物価上昇なども踏まえると、「全てが減税を喜べるという状態ではなさそうだ、ということが指摘されており、思ったほどの効果ではないのかもしれない」と述べた。
政治資金の透明性向上に向け自民党が提出した政治資金規正法の改正案が6日に衆議院を通過した。同法案ではパーティー券の購入者を公開する基準額を現行の「20万円超」から「5万円超」に引き下げ、政策活動費の項目別の金額や支出した年月を開示することなどが盛り込まれた。
定額減税と給付を含む支援策の規模は国内総生産(GDP)の約1%に相当するが、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、経済効果について、1年限りの減税・給付では消費より貯蓄に回りやすく、1年間のGDP押し上げ効果は0.2%程度にとどまるとみている。
内閣府は昨年12月に公表した2024年度の政府経済見通しで、定額減税や賃上げなどの効果で1人当たりの所得は前年度比3.8%増加するとの試算を示している。日本銀行も定額減税が個人消費にプラスに働くとみている。