『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』マット・スミス&ファビアン・フランケルがシーズン2を語る
6月17日より、U-NEXTでアメリカの放送開始時間と同時に配信が開始したHBOオリジナルドラマシリーズ『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』シーズン2。舞台は人気シリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』で描かれた世界の約200年前、原作者ジョージ・R・R・マーティンによる“歴史書”『炎と血』を基に、絶大な権力を誇るドラゴン使いのターガリエン家の覇権争いの歴史が描かれる。シーズン2では、七王国の先代王ヴィセーリス(パディ・コンシダイン)の後継を巡り、ターガリエン家は王女レイニラ(エマ・ダーシー)率いる“黒装派”と、王妃アリセント(オリヴィア・クック)率いる“翠装派”にそれぞれ分かれ、血で血を洗う激しい内戦が勃発する。 【写真】マット・スミスが演じるデイモン・ターガリエン リアルサウンド映画部では、キャストとショーランナーのライアン・コンダルに取材を敢行。3週に渡りインタビューをお届けする。第2回は、デイモン・ターガリエン役のマット・スミスと、クリストン・コール役のファビアン・フランケル。シーズン2の見どころを、それぞれ「悲しみ、贖罪、そしてドラゴン」(マット・スミス)、「二人の若い女性が、とてつもなく権威主義的で権力がものをいう世界で自分の居場所を見つける物語」(ファビアン・フランケル)としている。 ――視聴者はシーズン2にどんなことを期待できそうでしょうか? ファビアン・フランケル(以下、フランケル):何を期待できるか……? あのう、残念なことに、本当に同じことの繰り返しなんですよ。いや、全然残念なことじゃないんだけどね(笑)。つまり、この人たちは相変わらずで、(シーズン2に移り)ものすごく変化したとは言い難いです。シーズン1のラストからまだ5日しか経っていません。世界は常に変化し、脅威は常に変化し、利害関係も常に変化しているのだけど。『ゲーム・オブ・スローンズ』でもそうだったように、エピソードが進むごとに何かがコインをひっくり返し、今度は翠装派から黒装派に針の向きが変わるようです。シーズン2のエピソード1は、黒装派が最重要人物を失ったシーズン1のエピソード10以降、翠装派の怒りが頂点に達し、彼らの苦悩を描いているように感じました。だから、変化が直接的に起きているというよりも、自分たちの中に変化が現れているのでしょう。 マット・スミス(以下、スミス):私もそう思います。デイモン・ターガリエン(マット・スミス)は、彼の行動によって、自分自身を転落させるような状況に追い込まれています。彼を蝕むものーー兄(ヴィセーリス王)の喪失、妻との誤解、そしてあらゆる意味で社会から追放されてしまったことに、自身で向かい合わなくてはならなくなりました。自己反省の暗黒期に入ったのです。 ――あなた方のキャラクターについて、今シーズンで新たに発見した点はありますか? フランケル:そうですね、クリストン・コールはより大きな力を与えられました。彼が大きな力を得たことで、行動範囲が広がったと思う。誰でも力を与えられたら、ある程度は変わるものでしょう。だから私にとっては、より大きな権力を持つことで、それが彼にどのような影響を与え、その権力にどう対処するのかを見ることが今シーズンだと思います。 スミス:兄の死、そして彼の不在が起因する悲しみはデイモンに大きな影響を与えました。彼はそういった大きな感情をうまく扱える人間ではないと思うし、そのせいで少し制御不能になっています。 フランケル:デイモンはクリストン・コールのように感情をコントロールできない人物には映らないかもしれませんが……。 スミス:どうかな……。まあ、彼が悲しみをコントロールできているかどうかはわかりません。特に兄の死は、彼をかなりダークな内省期に追い込んだと思いました。そして彼は、とてもミステリアスな、とても深く暗い底に向かって歩いているのではないかと思います。 フランケル:『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』のような構成だと、画面に映っているものが全てだと思うかもしれません。でも、観客として映像で観ているものだけでなく、ここには登場人物の人生そのものが存在しているとも考えられます。だから、マットが言っているのは、観客がワンシーンの中で見ているもの、つまり悲しみについての対処法は、必ずしもその人の内部で起こっていることが映されているわけではない、ということです。 例えば、人は家族を失っても仕事に行かなくてはなりません。彼らが仕事を終えて帰宅した時、押し潰されそうな感情と対峙しているとは、職場の仲間からは想像もつかないでしょう。だから、マットが言っていることに共鳴します。観客の視点でクリステン・コールを見ると、彼は悲しみをコントロールできる男ではありません。しかし、それはあなたが観た彼の姿です。観客には観る機会がないだけで、このことが2人に与える影響は、悲しいことに他にもたくさんあると思います。 ――まだ観客が観ていないデイモンの姿はあると思いますか? スミス:ええ、もちろん、すべてのキャラクターに私たちがまだ知らない部分がたくさんあるでしょう。でも最終的には、どんな長編のテレビシリーズでも、人は思ったほど変わらないものだとも思います。それぞれが置かれた状況によって、さまざまな行動を取らざるを得なくなったとしても、結局のところ、その人間の本質は常に一定の範囲内に帰結すると思うからです。