『笑点』の三遊亭好楽、あの長寿番組に登場!23回も酒で「破門だ!」と言われ。弟子、孫弟子も含めると18人の大所帯はみんな家族
◆「後の喧嘩は先にしろ」 主役は自分じゃなくて、人様なんだと。そう思うようになったのが噺家になって3年ほど経った22歳の頃でした。今から考えたら当たり前のことなんですけど、そんなことにも気づいてなかったんですね。 ただ、そう頭を切り替えたのが良かったのか、当時の名人上手、売れっ子に可愛がられました。それこそ、当時は(桂)文楽、(古今亭)志ん生がいらっしゃって、落語の本当にいい時代でした。私自身(三遊亭)圓生、(林家)正蔵、(柳家)小さん、(林家)三平、(三遊亭)圓歌、(古今亭)志ん朝、(立川)談志、(月の家)圓鏡、(三遊亭)圓楽、みなさんにかわいがってもらいました。本当に、ありがたいことです。 師匠の正蔵の言葉で「後の喧嘩は先にしろ」ということを若い頃に聞いて、今も本当にそうだなと噛みしめています。 何かあった時に「またいつか良いタイミングで」なんて先送りにすると、どちらにとっても良くない。その間ずっと気が重いし、関係も悪くなる。何かあったら、そこで謝るなり、しっかり話をするなりしないと誰も得をしない。 『笑点』で五代目圓楽が司会をやっていた時、ダメ出しというか、番組の後に私を叱ってくれるんです。そうなると、その後の師匠の仕事を聞いて、そこについて行くんです。お供をさせてもらって、しっかり謝って、その日をしっかりと終わらせる。そうすると、翌日、師匠の顔がスッキリしてるんです。 こっちは怒ってもらってありがたいことでもあるんですけど、師匠だって怒りたくて怒っているんじゃないところも多々ある。そして、怒ると「あれで良かったのかな」とかいろいろ考えもするわけです。それを引きずると、師匠につらい思いをさせてしまう。だったら、すぐに謝って、行動で示して、流れにケリをつける。これは、ずっと実践してきました。
◆弟子、孫弟子、全員に売れてもらいたい 逆に、私が弟子に言う言葉。そうですね、あんまりアレコレは言いませんけど、私たちが普段出してもらう寄席は、お客さまも我々も同じトイレを使う形になっているんです。そこが汚れていたら、自分たちの恥。なので、誰もいない時にきれいにしておきなさいとは言っています。 特に道具がなくても、全部手でやってキレイにしたらいい。汚いものが手についても、そんなもん、洗えばいいんだから。そして、大切なことは「自分がやった」って絶対に言っちゃダメ。知らん顔しといて、お客さまが気持ちよくトイレを使ってくれていたら、自分だけが喜べばいい。言ったら、やったことが消えちゃうよ。それは言ってます。 そして、弟子、孫弟子、全員に売れてもらいたい。無茶な話なのかもしれませんけど、思いとしては心底、そう思っています。弟子が売れるためならなんでもする。これも心底思っています。自分の子どもですからね。当たり前なんですけど。 よく考えたら、小さい頃からガキ大将だったんですよね。年下の子らを連れて今日は何をして遊ぼうか。そればっかり考えてました。あそこで野球をしようか。あの公園に連れて行ってやろうかと。 そして、今もそうなんですよね。弟子たちと今日は何をしようかと。基本の考え方は変わってません。ま、そんなことしてるんだったら、落語の稽古をしろと言われると困っちゃうんですけど。(笑) ただ、もう78歳ですしね。おそらくそこの考えは変わらないだろうし、これからもそうやっていけたらなと思っています。
三遊亭好楽,中西正男
【関連記事】
- 多発性骨髄腫の宮川花子を介護する夫・大助。座ったままで夫婦漫才を。「嫁はんは宝物」「漫才は仕事ではなく生きる目標」90歳と85歳の現役漫才師を目指す
- 吉本新喜劇の看板女優・未知やすえ「完治しない間質性肺炎と診断され、意識が変わった。時代も変わり、キレる相手は夫の内場勝則に」
- 川中美幸「母の生きざますべてが遺言だった。母の好きだった松竹新喜劇、今の自分やからこそ出してもらえるんやろうな」
- 海原かなた76歳「相方の薄い髪をフッと吹いたらドーンと笑いが」50歳で売れた男が語る〈辞めたらアカン〉の力と自らの引き際
- 大村崑、92歳。妻の勧めで86歳から筋トレ開始。芝居の「見て盗む」力が役立った。心から「元気ハツラツ!」と言える喜び