16歳・サニブラウンが持つ9秒台の可能性
世界陸上の男子200メートル準決勝が26日、中国・北京で行われ、準決勝2組に登場した日本のサニブラウン・ハキーム(16歳、城西高)は、20秒47の5位に終わり、決勝進出を果たせなかった。 9レーンスタートとなったサニブラウンは、最初から遅れた。スタートの反応タイムは、最下位の0秒182。第1コーナー付近で、予選に続けて同組だった世界ランキング1位のジャスティン・ガトリン(33歳、米国)らのスピードについていけずにトップ争いからは脱落。最後の直線でギアを入れなおしたが、5位に残すのが、精一杯。20秒34の自己ベストにも及ばぬ記録で終わり、ウサイン・ボルト(29歳、ジャマイカ)が持っていた18歳11か月の世陸最年少決勝進出記録を破ることはできなかった。 試合後、サニブラウンは、「やっぱり(ガトリンら世界のトップ選手は)強いなというのを改めて感じました。昨日、一本走っていたので緊張はしませんしたが、その一本走った疲労感が、いつもと違ってきつかったです。後半、バラバラになってしまった。そこが痛かった。ボルトと走れなかったのは悔しいけれど、それは来年に持ち越しということで」と、清々しい表情で語った。 ちなみにこの組で1位だったガトリンは、19秒87。3組でトップのボルトは19秒95だった。 決勝進出の快挙はならなかったが、ガトリンさえ驚かせた16歳の準決勝進出は驚愕。このまま順調に進み、来年のリオ五輪代表に選ばれれば、元100メートルの日本記録保持者の不破弘樹氏が1984年のロス五輪で果たした陸上五輪出場の男子の最年少記録を破ることになる。 現在、一般社団法人「TEAM不破」の代表理事として「速く走る方法」を子供たちに教えるアスリートアカデミーを立ち上げている、その不破弘樹氏(48)はサニブラウンの走りを見て「彼が16歳であることを忘れてしまっていた。スプリントの安定感や、絶対的スピードのキープ力はまだまだ足りないが、世界陸上という場で、最高の経験を得た。今後、100メートル9秒台、200メートルの19秒台を日本人で一番最初に樹立するのは、彼になるかもしれない。桐生選手もウカウカしていられないだろう」と、目を丸くした。 不破氏は、サニブラウンの長所をこう見ている。 「体の中心、つまり骨盤や股関節周りに、しなやかな柔らかさと日本人離れした強さを感じる。その体の中心の強さが、大きなストライドと推進力を生み出している。躍動感がある。ガトリンのような、まるで精密機械のような綺麗な走りではなく、多少ぶれながらでも推進力を生かした走りは、ボルトタイプだろう。今はレース後半に上半身が暴れるが、その推進力のパワーでカバーしている。肉体のひざや足首などのパーツでなく、体の中心が推進力なのは伸びシロを感じさせる」 ガーナ人の父親と陸上経験のある母親から受け継いだ遺伝子が、その推進力を生み出しているのだろう。