「旅が気分をアゲるものなら二拠点暮らしは心を鎮めるもの」60歳男性が「もうひとつの地元」に茅ヶ崎の築60年マンションを選んだ理由
コロナ禍を経験したことで、ライフスタイルや価値観が変わった人は少なくない。必ずしも都市に住む必要がなくなったり、自然豊かな場所でリラックスする時間が大切に思えたり。そうした人たちに都市と田舎、あるいは郊外を行き来する「二拠点生活」が注目されている。今回紹介するのは、服飾ジャーナリストの山本晃弘さんのスタイル。平日は東京都目黒区、週末は神奈川県茅ケ崎市と、二つの拠点で暮らす実感を聞いた。 【画像】二拠点目として60歳男性が一目惚れした部屋の様子
コロナ禍の影響で、都心以外での時間、潤いのようなものが欲しくなった
山本晃弘さんは、新聞や雑誌、ウェブサイトなどでファッションの情報を発信する編集者・ジャーナリストだ。 コロナ禍前は、多くの会社や人と一緒に対面で仕事をする多忙な毎日で、夜は会食も多く、マスコミ人らしい華やかな生活を送っていた。 ところが、コロナ禍になり、それが一転。対面での仕事も会食も自粛という期間には、東京・恵比寿の事務所と、目黒区の自宅マンションを行き来するだけとなり、都心以外で過ごす、潤いのようなものが欲しくなった。そこで思い出したのが、海だった。 山本さんは20代後半から30代のころ、サーフィンが趣味だった。平日は夜遅くまで都心の出版社に勤め、週末は神奈川県の鵠沼海岸まで車で通い、波乗りをした。 編集者として平日にガチガチになった頭も体も、週末の海に行くと解放された。海に行くと決めれば、そこで会う仲間たち同様、天気のことしか考えなくなる。波が来ているか、風は吹いているか。そこでは流れる時間も違い、スローダウンできた。 しかしその後転職し、新しい職場環境で生活はますます多忙に。家族構成も変わる中、いつしかサーフィンにも行かなくなっていた。 それがコロナ禍により、都心で一人、静かな生活をしばらく続けるうち、「また海で過ごしたい」という思いが甦ってきたのだという。 編集者である平日とは違う時間の流れや価値観をくれる、海の見える小さな部屋を探そう。そう思い立ったのは、59歳になる2022年のことだった。