「旅が気分をアゲるものなら二拠点暮らしは心を鎮めるもの」60歳男性が「もうひとつの地元」に茅ヶ崎の築60年マンションを選んだ理由
サザンビーチの目の前、築60年近いマンションに一目惚れ
場所は自宅の目黒から夜なら車で1時間程度で行ける、神奈川県の湘南海岸がいい。ビンテージマンションの情報も多く掲載されている不動産のサイトを参考に、葉山町や鎌倉市などの物件も見たが、予算内では駅からの便が悪いか、海からは遠い部屋しかなかった。 だが、茅ケ崎のサザンビーチの目の前にある、築60年近いマンションの1室が目に留まった。コンビニもファミレスも至近距離で、駅から徒歩16~17分。バスもある。週末を過ごす部屋として、35㎡というサイズ感もちょうどよかった。 古いマンションだが、内装はリノベーションされて真新しかった。大家さんはその部屋の工事を手掛けた工務店で、内覧用に展示していた家具も「どうぞ使ってください」。まさに渡りに船だった。 「茅ケ崎駅前の不動産屋さんに案内してもらった1軒目。二拠点の物件探しだと理解されなかったからか、『ここは古いし、狭いですよ。横浜みなとみらいの高層マンションはどうですか?』とお勧めされたけど、私自身はサイトを見て、めちゃピンときてたんだよね。 いざ内覧してみると、3階の部屋から道路を隔てて海で、屋上からは左手に江の島、右手に富士山が見える。ここいいじゃん!って、1軒目で即決しました」(山本さん・以下同) 以来、賃貸契約して約1年半。来られる週末は、金曜夜か土曜朝に茅ケ崎に着き、日曜夜か月曜朝に東京に戻る。夜中なら車で片道50分だ。できればこれから、週に3日間滞在できるようにしたいという。
「旅行が気分をアゲるものだとしたら、二拠点生活は気分を鎮めるもの」
茅ケ崎での週末の過ごし方について聞いてみた。 「特に何をするでもない、着いてすぐ昼寝するときもあるし(笑)。やることの選択肢が少ないのが、のんびりできてまたいい。いつも行く蕎麦屋さんで蕎麦を食べて、図書館で本を借りてひなたぼっこしながら読んで、海を散歩するぐらい。 あとは自転車で近所の農園に行って新鮮な野菜を買って料理したり、東京へ持って帰ったりするのも楽しみ」 まだサーフィンを再開することはできていないというが、その目的もほどなく叶いそうだ。 何ともうらやましい、海の目の前の二拠点目ライフだが、ホテルに泊まる旅行ではなく、家賃の支払いが生じる賃貸契約を選んだのはなぜなのか。 「私は岡山出身で、中学高校のときはずーっと自転車生活。どこへでも自転車で行っていたそのころのような、なつかしくも気楽な感覚が茅ヶ崎にはあるね。岡山の実家がなくなった私にとって、ここは『もう一つの地元』感がある貴重な場所で、旅行では持ちえない感覚なんです。 ビーチサンダル履いて床屋さんへ行って、居眠りしながら散髪してもらったり、中学生に戻ったようでもあるし、引退して爺さんになる練習をしているようでもあり(笑)。旅行が気分をアゲるものだとしたら、二拠点生活は気分を鎮めるもの、かな」