生命が枯渇し、抵抗する意志もなくなって迎えた「死」…プーチンが最も恐れた男・ナワリヌイの凄惨すぎる「最期」
そして迎えた「死」
客室乗務員が訝しげにこちらを見ている。離陸時に、私のPC使用を見逃してくれた乗務員のようだ。力を振り絞り、言葉を口にしようとする。自分でも驚いたが、「毒を盛られた。命が危ないんだ」という言葉が飛び出した。乗務員は、動揺も驚きも見せないどころか、心配する様子もなく、なんと薄笑いを浮かべている。 「どういうことでしょうか」 私は、ギャレーのフロアに立つ乗務員の足元に倒れ込む。乗務員の表情ががらりと変わる。転倒ではない。卒倒でもない。意識を失ったわけでもない。だが、通路に立っているのが無意味で馬鹿げていると感じたことは確かだ。そりゃそうだろう、死にかけているのだから。間違っているなら訂正してほしいのだが、誰だって死ぬときは横になるものだろう。横向きに寝た。目の前に壁がある。もはや気まずさも不安も感じない。周囲に人が集まってきた。驚きや心配の声が上がる。 女性が私の耳元で声をかける。「どうしました?気分が悪いですか?心臓発作ですか?」 私は力なく首を横に振る。心臓は問題ない。 物事を考える余裕があった。死について巷で言われていることは真っ赤な嘘だ。生まれてからの人生が走馬灯のように浮かびもしない。最愛の人々の顔も現れない。天使も、まばゆい光もありゃしない。ただ壁を見つめて死んでいく。周囲の声がぼんやりとしてくる。最後に聞こえたのは、「お願い、目を覚まして、目を覚まして」という叫び声だ。そして死を迎えた。 ネタバレ注意だが、実際には死んでいなかった。 『大いに感銘を受けた「日本人神経外科医」は存在すら幻覚だった…“毒”を盛られたロシア反体制指導者が病院で体験した「向精神薬の恐ろしさ」』へ続く
アレクセイ・ナワリヌイ、斎藤 栄一郎
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