天気が悪いと頭痛や関節痛に、「気象病」について今わかっていること、自分でできる対策は
関節痛
天気と関節痛との関係も複雑だ。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校のリウマチ専門医であるヘザー・ブキリ助教によれば、氏が担当している関節の炎症に関連する疾患(関節炎や全身性エリテマトーデスなど)を持つ患者の約3分の2が、天候の変化と関連した関節痛を経験しているという。 いくつかの研究からも、患者の約65%が、天候が変化、特に気圧が下がったとき、湿度が上がったとき、気温が下がったときに関節などの痛みを経験することが示されている。一方、気圧と痛みの関係は見られたが、気温および湿度と痛みの関係は見られなかったとする研究もある。 ブキリ氏はその理由を、天気と痛みの関係を調べる研究の多くが短期間で、しかも患者の自己申告に頼って行われているせいではないかと考えている。「研究を厳密に行うなら、管理された環境に患者を置き、毎日同じ行動をしてもらう必要がありますが、そこまでやってはいないのです」 ブキリ氏によると、気圧の変化が関節痛を誘発する理由についてはいくつかの説がある。そのうちの一つによれば、「関節内の狭い空間は外よりもわずかに圧力が低くなっているが、気圧の変化によってこの空間が膨らんだり縮んだりすると痛みが生じる」からだという。 【対策】ブキリ氏は、室内を暖かく乾燥した状態に保ち、先手を打って鎮痛剤を服用することを勧めるが、最も重要なことは、天気が悪くて湿度が高い日にはストレッチをして体を動かすことだとしている。
心血管疾患
気圧は心血管系や呼吸器系の健康にも影響を及ぼすと、米メイヨークリニック医科大学の心臓専門医で冠動脈疾患の専門家であるパトリシア・ベスト氏は言う。 このテーマに関しては、気圧の低い高地へのハイキングや旅行についての研究がほとんどだ。「標高が高くなると、すぐに生理学的な変化が起こります」とベスト氏は言う。「血圧も血液粘度も肺動脈圧も高くなります」 気温の変化も強い影響を及ぼす。ベスト氏によると、気温が高すぎても低すぎても、心臓発作や脳卒中による死亡者数が通常よりも多くなることが研究によって示されているという。心血管疾患の場合、極端な暑さは死亡率を2.2倍に増加させるが、より恐ろしいのは極端な寒さの方で、死亡率は9.1倍にもなる。理由は不明だが、私たちの体は寒さに適応する方が難しいのかもしれない。 「体は必死になって体温を調節しようとします」とベスト氏は言う。気温が極端に低いときには手足の血管を収縮させて、脳などの重要な臓器に血液を送ろうとする。血管の収縮によって血圧が上がるため、心血管系の病気がある人は心臓発作を起こしやすくなる。反対に、気温が極端に高いときには、体は皮膚に送り込む血液を増やそうとして心臓を酷使してしまう。 また、天候の急変によって気圧と気温の両方が変化すると、どちらか一方だけの変化よりも心血管系疾患に大きな影響を与えるという。 【対策】専門家は、心血管疾患のある人は、寒い日には暖かくして過ごすように心がけ、標高の高い地方に旅行するときは特に注意するように勧めている。ベスト氏は、「心血管系が健康ならば、寒さも気圧の低下も特に問題にはなりません。ただ、心臓の動脈が詰まってしまうと危険です」と言う。「低い気圧にはそのうち体が慣れてきますが、最初の2、3日は無理をしないことです」
文=NATALIA MESA/訳=三枝小夜子