兄は100キロ以上離れた小学校。仔羊が一番の友、一人ぼっち遊牧民の女の子
日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。その北に面し、同じモンゴル民族でつくるモンゴル国が独立国家であるのに対し、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれ、近年目覚しい経済発展を遂げています。しかし、その一方で、遊牧民としての生活や独自の文化、風土が失われてきているといいます。 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録しようとシャッターを切り続けています。内モンゴルはどんなところで、どんな変化が起こっているのか。 アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。
田舎には子供がほとんどいなくなった。少なくとも学齢期の子供は、学校の休み以外は田舎にいない。 草原の奥地で一人の女の子と出会った。彼女は両親と三人暮らしだった。私が町で買ってきたお菓子や飴などを渡しても、最初は人見知りのためになかなか受け取らず、母親に頼んで代わりにもらっていた。しかし、時間が経つにつれ、少しずつ会話するようになった。 彼女には兄が一人いるが、100キロ以上離れたホショーの小学校に通っているので、なかなか会えない。だから、とても恋しくなっているという。そして、一人ぼっちで遊ぶのは「大嫌い」。今は「仔羊が一番の友」ともいう。 次の日、お別れの挨拶をして、車で出発した。どんどん離れていく後方に、一人ぼっちでいつまでも立っている彼女が見えた。なんとも寂しい気持ちになった。(つづく) ※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第10回」の一部を抜粋しました。
---------- アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA) 1977年 内モンゴル生まれ 2001年 来日 2013年 日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。