180SXとの加速バトルで勝利するCM……は面白いけど失敗だった!? 初代日産リーフが残した偉大なる足跡
2015年には加速性能をアピールするCMを放映
そんな初代リーフは、2017年秋まで約7年間のモデルライフにおいて2度の大きなマイナーチェンジを受けています。 1度目のマイナーチェンジで中期型が登場したのは、2012年11月。このときEVの走りを支えるモーターシステムが一新され、一充電航続距離が228kmまで伸びました。あわせて初期型では、未来的な電動パーキングブレーキでしたが、なぜか足踏み式パーキングブレーキに退化しています。 2015年12月には2度目のマイナーチェンジが実施されます。ここでのトピックスは、バッテリーを大きくしたバリエーションを追加したこと。これにより、JC08モードでの一充電航続距離は280kmまで伸びています。また、衝突被害軽減ブレーキなど先進運転支援システムも備わったのも、このときです。 そして、2015年は別の意味でリーフが“クルマ好き”の注目を集めました。なんと、同社のスポーツカーとしてコアな人気を誇り、2リッター・ターボエンジンを積むFRモデルである「180SX」と加速対決をして、見事に勝利するというものでした。 『加速の常識をくつがえせ』というキャッチコピーを含め、EVならではのスムースかつ素早い加速性能をアピールするCMとしてのわかりやすさを評価する声もありましたが、古くからの日産ファンからは、「俺たちが愛してきた日産車をバカにしているのか」と反発もあり、賛否両論的に話題となりました。 冒頭、いまの日産が経営的に厳しい状況にあることを記しましたが、思えばリーフ vs 180SXのCMによって“ロイヤリティ”の高いユーザーが離れていってしまったことが、日産の厳しい状況につながっているのかもしれません。その意味では「EVに特化した」ことで負の側面があったというのは事実かもしれません。 ところで、筆者は初代リーフの後期型(30kWh仕様)を所有、EVライフを楽しんでいた時期があります。たしかに乗り始めたころは、航続距離に不安がなかったかといえばウソになりますが、乗り慣れてくるとバッテリー充電率と航続可能距離の関係が肌感覚でわかってきますし、EVのベストシーズンは空調が不要で、外気温的にもバッテリーの性能を引き出しやすい10月である、と学んだのもリーフとのカーライフを過ごしたからでした。 ちなみに、リーフ専用アプリで月間平均燃費を記録していた2018~2021年における10月の平均電費は以下のようになっています。 2018年10月:8.2km/kWh 2019年10月:8.7km/kWh 2020年10月:8.8km/kWh 2021年10月:8.9km/kWh 上記の数値で走れるようになると、充電を心配するようなこともなくなりました。EVの航続距離不足を問題視するのはEVに慣れていないからで、生活をともにするようになると、「意外と充電不足でドキドキすることはないものだな」と思ったのも初代リーフから教えてもらったといえます。 また、数字の変化からもおわかりのように、リーフに特化したエコ運転を身に着けることで、航続距離自体を伸ばせるようになっていったことはよい思い出です。4年ちょっとしかリーフに乗っていなかった筆者でもそうなのですから、初代リーフの頃からEVに乗り続けているドライバーには、各人が独自のエコ運転を身に着けているのかもしれません。 では、なぜ初代リーフを降りてしまったのか……とえば、それは駆動用バッテリーが「セグ欠け」してしまったからです。リーフにおいてはメーター内においてバッテリーのSOH(State of Health)を12個のセグメントで表示しているのですが、それが11セグメントになってしまったのです。劣化を可視化するというのは親切な設計ですし、じつはセグ欠けしても、満充電で200km前後は走れる能力を維持していたのですが、なんとも気になってしまい手放すことになったのでした。 オドメーターが5万kmに届いていない状態でセグ欠けするというのは、個人的には想定外というか、耐久面で期待どおりとはいえない印象も受けましたので。 初代リーフの場合はバッテリーの温度管理がなりゆき任せだったのも、こうした劣化速度に影響している要素があるというのが定説。最新のEVであれば、バッテリーの温度管理は当たり前、夏でも冬でも最適温度を維持するよう設計されていますから、それほど劣化を心配しなくともよくなっているはずです。
山本晋也